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2004.09.30

消費者心理と秋の空

 自分はプロスポーツのチームを応援するという気持ちになったことがないし、元々ナショナリズムの薄い人間で、自分の地元の代表校がんばれだとか、日本対どこそこの国というような試合があってもいまいち盛り上がれないタイプなので(その中にある個人の能力などに魅せられることはあっても)球団ファン心理など「ああ、そうですか」と言うレベルでしかない。しかし、さすがにこの間のプロ野球のストの話などは、興味を持たざる得なかった。

 そもそも、会社を経営するという点から考えれば、合併しようが、リストラしようが、法と協定の範囲内なら何をしても良いと思うのだが、球団の人気自身が即、収入に結びついてしまうプロ野球球団ではやはり断行できなかったのは仕方がない。コアコンピタンスがそういう物なんだから、それを捨てて企業が成り立つわけはないのである。そのときは消滅しかない。

 そのもとになった近鉄とオリックスの合併に端を発した日本プロ野球の騒動も一応の方向が見え、ライブドアか楽天か等という点に興味が移っている形になったが、この騒動どうもいただけない。オーナー企業、選手含めてのプロ野球側の事にもそうなのだが、消費者であるファン側にもどうも一貫性を感じられないと言うか、思慮深さを感じられない。

 確か経営状態はディスクローズされていないので、近鉄バファローズの経営が非常に悪いことが表立って分かったのは、例の「名前売ります。スポンサー募集」の件からだろうが、この意味が読み解ければ(そんなおおげさなもですらないが)、この時点ではもうすでに退っ引きならないとこまで行っていたことがよく分かる。にもかかわらず、ファンはそれに「No!」と言った。一見ファンの良い主張のようだが、果たしてどうだろうか。今現時点で考えれば、少しは分かる人がいると思うが、今までの仕組みの中ではあの名前スポンサー方式が最も良い選択肢だったと思われる。

 近鉄が自分の名を外してまで、資金提供者を募りたかったのは、単純に身売りしにくい事情があったからに他ならない。実際は身売りしたいほどの業績だったのだ。身売りすると受けてくれた企業は莫大な加盟料をオンして支払う形になる。これをさけて実質上のオーナーを入れ替えるにはあの手段しかなかったのではないかと思われる。大体「近鉄」という名前が付いていない「バファローズ」で「近鉄」の役に立つ部分はどれほどだろう。これが、協約をすり抜けるようなこの手段を(加盟料を山分けする)他の球団や機構の方から反発されるのは分かる。しかし、ファンが反対したのは本当に解せない。ファンは「近鉄」が好きではなく(そういう人もいるだろうが)概ね、バファローズという在阪球団が好きだったはずなのだ。

 上記の方法なら冠企業は代わっても、本拠地も選手もあまり替わることの無い、今考えると最も痛みの少ない手段だった。そういう意味で良い手段だったと思う。ところが何が引っかかったのか総じて近鉄ファンは「No!」と言った。ファンに総スカンでは企業の人気自体が収益を大きく左右する企業にはこの手は使えなくなった。

 結果的には、今回の騒動が発端でプロ野球界が変革し、楽しめる人が増えることは良いことかも知れない。しかし、騒動の終結で「近鉄バファローズ」が無くなることを嘆いていたファンには申し訳ないが何の同情も出来ない。ただ、単に騒いで自滅した哀れな集団にしか見えないのだ。

 結局名前騒動の段階でファンが「NO!」と言った時に、「近鉄バファローズ」の消滅は決まってしまったのだ。そして消えることを自ら決めたと言うことをファンの人たちは覚えていて欲しい。そこからまた真剣にプロ野球のことを考えることになればいいと思う。

 こういう心理は、日本人独特なのかも知れないが、実は他の消費活動にも良く出ている。消費者の立場の時に1チャネルだけでなく総合的に動向を判断できるようにならなくては、見誤ること多数だなぁと思う次第だ。

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