JR西日本福知山線脱線事故報道に見え隠れする危機
私の中では、ネットが既存メディアの何を殺すのかは以前述べた通りで、ビジネスモデルの崩壊に過ぎない。「過ぎない」と言うのは、「ジャーナリズム」が本当にお金とか関係無しに成り立つ物で有れば、報道企業の存在が危うくても、何ら揺るぎないだろうと言うことだ。
しかし、一連の騒動の中でそうではないことがよく分かった。
企業としては基本的に金儲けの手段を考えていくことが食い扶持を支えている。ラジオが出てきた時に新聞が終わるような錯覚が有ったようだが、ラジオ欄を作って逆に新聞の売り上げは伸びた(最初にやったのは読売新聞だったか)し、そもそも紙の総覧性は未だに他のメディアを圧倒していると思う。新聞がそう簡単に減ることはないと思う(が、配布手段などはもう少し工夫があっても良いかも知れない。)ラジオだって生きる手だてはあるはず。如何にインターネットに広告収入を抜かれたとはいえ、在京のラジオ局は億単位の利益を上げている。多少後ろ向きでもそれなりの手段はあるはずだ。
しかし、しょせん報道はサービスを売る仕事だから、そのサービスが受け入れられなくなったら終わりだ。だからインターネットがどうとか言うよりも、コアコンピタンスをもう一回見つめ直すべきだろう。ジャーナリズムだけでは企業を支え切れまい。
しかも、その最後の砦と言うべき、ジャーナリズムが危ういのだから。
先日のJR西日本福知山線の脱線事故の報道は各社ともお粗末すぎる。ようやく落ち着き始めたものの、初期は速報を重んじるばかりか、検証がなされていない記事がどんどん出てしまい、事故原因などは二転三転どころではない有様だ。彼らは、個人に過ぎない専門家を一人二人言質を取ったことで満足してしまう(権威主義を批判するような記事が多いがまさしくこう言うのを権威主義というのだが)の呼び出して、それだけで説明しきろうとする。全く科学的でない発想だ。検証手段というものを勉強していないんだろうか?あるい故意にねじ曲げているのか、ミスリードの罠が多すぎて、読者や視聴者は混乱しているだろう。
とにかくまず不要な記事が多い。不要なコメントが多い。そういう者を取ってくれば仕事をしていることになるとはお気楽だ。
事故当日本当に必要だった情報の内、大阪の人間が困っていたのは「今日はどうやってあの区間を動けばいいのか」と言うことだった。阪神大震災の時もそういう話はあちこちで聞こえたのに、そんなことは全然報道に載らなかった。何も学習していない。
取材や報道という傘の中で視聴者や取材対象者を煽り、献花台周辺の似非被害者(あれだけテレビで注目されている場所が分かったら嘘でもついて自分の義勇を語る者が居てもおかしくないし、テレビが見ていることで人はまず演技してしまう。記者会見場での記者までがこんな調子だった。)やJR西日本職員に暴力をふるう輩まで(事件後1週間で20件以上と言う報道があったが実際はその5倍以上発生してるらしい。)出してしまうそういう怪しさを選別することなく流すのは本当の意味でのプロとは言えないと思う。
実は事件の日に私が大阪にいた事を自分の親に伝えたら、
「馬鹿な若い運転手が暴走しやがって」
と言っていた。普段はこんな事を言う人間ではないので驚いたのし、私はそのときには運転手の「事故の最終形態に至った走行のメカニズムと運転手の心神喪失状態を考えるべき」という結論を持っていたので、理由を言ってたしなめたのだが、このくらいのこと(事件の重大さと被害の甚大さに関係なく)製造業の人なら大抵知ってそうな、QCなどの信頼性工学に基づく検証手段を持っていれば、個々人を攻めるのではなくシステムやプロセスを検証すると言うことに簡単に行き着くはずなのだが、報道にはそんなことは関係なさそうだ。
被害者やそれにまつわる人が対応のまずさに言論で怒りをあらわにして、重大さを訴えるのは私は悪い手段ではないと思うが、記者によって、検証せねばならない情報まで、扇情的な記事に変えられてしまうと「アホか?」と思わざる得ない。
もしかしたら自称プロの集団はいつの間にか本当の意味ではアマチュアにすら劣る者たちが増えているのかも知れない。
そいつらが嘘を伝えてナンボだと思ってるところが、本当のメディアの危機なのかも知れない。
P.S.ホリエモンがライブドアPJの記事を引用して自分を養護するような記事を書いているが、このレベルの記事がたまたま1つではまだまだ。雇った記者、PJ、そして既存メデイアからの情報をうまく使って商売していって欲しいものだ。
« 「稲盛和夫」「実学」「感想」の三点セットに思う | トップページ | TVアニメ・特撮とりまとめ。 »
「ニュース」カテゴリの記事
- 古紙のリサイクル幻想(2008.01.17)
- 小畑健逮捕(-_-;(2006.09.07)
- 洗剤CMの光と闇(2006.04.09)
- 108分の?『化学物質』と科学知識(2005.12.29)
- 一太郎訴訟ジャスト社逆転勝訴(共同通信)(2005.09.30)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 「クロニクル」インプレッション(2013.12.31)
- 映画が楽しかった2013(洋画編)(2013.12.30)
- 映画が楽しかった2013(邦画編)(2013.12.30)
- 2013年観た観たい映画リスト 最終版(2013.12.30)
- 「鑑定士と顔のない依頼人」インプレッション(2013.12.17)
「マスコミ批評」カテゴリの記事
- メディアが間違いを助長する(2009.01.12)
- 古紙のリサイクル幻想(2008.01.17)
- 捏造ウオッチメモ(おぃおぃ)20070303(2007.03.03)
- ねつ造情報に対するリテラシ(2007.02.23)
- やっぱり「学力」もいる。(2007.02.07)
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: JR西日本福知山線脱線事故報道に見え隠れする危機:
» ココフラッシュにマスコミ批評カテゴリーがついに登場。 [雑談日記 (徒然なるままに、、。)]
みなさんご協力ありがとうございました。10サイトを突破しついに「マスコミ批評」 [続きを読む]
コメント