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2005.08.20

響鬼の魔化魍のデザイン考中間発表?

 「妖怪大戦争」を観た余波ではないが、時間の余裕もあるので少し自分用にまとめておこう。

 今まで現れたまたは記述が分かった魔化魍のデザインモチーフはおそらく・・・

 ツチグモ(虎+蜘蛛)
 ヤマビコ(サル+オウム)
 バケガニ(カニ・・・足は少ないけど)
 イッタンモメン(エイ+鳥)
 オオアリ(アリ)
 オトロシ(サイ+亀)
 ヌリカベ(カタツムリ?+木)
 ウブメ(魚類+鳥)
 ヤマアラシ(牛+ヤマアラシ)
 オオナマズ(ナマズ+チョウチンアンコウ)
 アミキリ(エビ+昆虫?)
 ナナシ(不明)
 ドロタボウ(稲+泥+人間?)
 カッパ(亀+人間?)
 バケネコ(猫+人間?)
 オオクビ(蜂?)

あたりだろう。

 以前書いた記事で、高寺Pのホワイトボードの魔化魍の記述に言及した。

>>虎+蜘蛛=土蜘蛛

>>エビ+カミキリ=アミキリ
>>カエル+スッポン=カッパ
>>シャチ+アシカ=海坊主
>>サル+オウム=山彦
>>カメ+カメレオン=?

 上と照らし合わせるとカメ+カメレオンは未だに謎だが、海坊主は出ていないもののそれ以外は出ていて、実際の映像とも合致している。

 今一般に知られている妖怪の図版というのは鳥山石燕由来、水木しげる由来がほとんどで、石燕の図版には石燕オリジナルの妖怪が、水木図版の中には水木しげるオリジナルの妖怪が混じっているので、伝承されてるモノだと思いこまれやすく、気を付けなくてはいけない。特に柳田国男の妖怪談義などの文でもチラッとしか出てこない妖怪は図版がないモノが多く、有名な鬼太郎の周りにいる妖怪は意匠を水木しげるが与えるまで共通認識がなかったモノが多いのだ。それを使うのは、意匠としての著作権を侵害する危険性がある。従って名前は使えても姿は変える必要があるだろう。おそらく姿を新たに起こしなおした背景にはそういったことも考慮されているのではないだろうか。特にイッタンモメン、ヌリカベはその辺もあり意図的に遠いデザインになっているのでは?。

 石燕をはじめとする江戸時代に出たモノはすでに著作権切れだろうし、その時点で他からの引用である場合には全く問題がないから似ていても問題ないのだろうだろう。

 もちろんチャレンジはあると思うが、等身大魔化魍がそういう気を払ってないのでますますそういう気がしてきた。

 妖怪(と言うか化け物・・・現在の「妖怪」は明治以降の概念)に元ネタを得ているが、オオアリ以外は何か頭の図版がある。オオアリはこれと言った話などが残っていない。こいつだけはテレ朝の公式サイトでも魔化魍の紹介に「故事」というモノが存在していないので、そういう路線から外れているのかも知れない。

 最初のツチグモは非常に重要だ。

 大江山酒呑童子退治で有名な源頼光による土蜘蛛退治もだが、日本の古代先住民の蔑称として使われているらしい節がある。従って神話でもある日本書紀や古事記などにまで遡る事が出来なくもない。デザインは虎と蜘蛛だがこれは「土蜘蛛草紙」の絵にある土蜘蛛からインスパイアされたモノだろう。鬼と土蜘蛛はこの頼光でつながりがある。

 ヤマビコは石燕の「画図百鬼夜行」で山の上にいるサルのようなモノが描かれている他の文献にも姿は猿の様と記述されているモノがありその辺が元ネタだろう。クチバシがあるデザインなのだが、オウムと合わせたのはオウム返しに駆けたモノであることは明白だ。

 単なる筆者の予想なのだが、土蜘蛛は鬼にも絡む蜘蛛の怪物であること(仮面ライダーにコウモリやクモの怪人で始まるのが多いというのはバットマンやスパイダーマンを倒すという洒落という俗説があるが、最近はそういったことをお約束として期待されてるのもあるだろう)で選ばれたのかも知れないが、その後裏付け作業をやる最中に、二つの生物からデザインソースを取ることにしていったのかも知れない。番組の内容上も重要な魔化魍のような気がするが、デザインの方向性もこれが決めたのではと思っている。

 イッタンモメンのあのデザインは水木しげる作である。「妖怪大戦争」でも出ているが「鬼太郎の前では良い顔しやがって!」と言う川太郎の台詞は逆に言うとあの一反木綿が水木しげるオリジナルデザインであることを強調したかった裏ネタのように思われてほくそ笑んだ。「響鬼」ではマンタと鳥類の掛け合わせたデザインで表現されている。成長途中では空中で表面がひび割れてしまうなど布っぽい要素もあることを示していた。只の布でしかないモノを表現するのに良く水木デザインの罠から抜け出たなぁと感心した次第だ。

 ヌリカベもあの壁に手足が生えたデザインは水木しげるのものだ。「突然前に進めなくなる怪異」でしかないヌリカベは姿はほとんど伝承されていない。むしろ姿は透明な方が、正しいかもしれない。さらに言うと子泣き爺とかもである。あれにいたっては、文としては「妖怪談義」の数行の記述しかないのでは?これら鬼太郎周りの妖怪は良く引用されるデザインだが、ダイナミックプロのように訴訟を起こすと、水木プロが確実に勝てそうだ。今年の「妖怪大戦争」は制作に水木しげるが絡んでいるのでその辺はクリアして居るんだろう。水木さんが知らなくても妖怪キャスティングの京極夏彦が知らないわけがない。

 しかし、なぜナメクジだかカタツムリだかなんだろう?

 今年もいますよね。「ぺとぺとさん」とか意匠を借りてるの。

 オオアリは元ネタがあるのかないのか分からないので割愛。

 オトロシは全く過去の図版とかけ離れている。本は顔の周りに毛だらけの怪物としてだけ描かれている。解説はなく絵だけだ。今回のオトロシはそれらに似せようとする工夫すらない。最近の文章や水木マンガで出てくる落ちてつぶすという部分だけが機能として活かされている。見た目の印象はサイの顔をしたガメラ。唯一、甲羅に眼があるのが顔と誤解する意匠を組み込もうとした名残なのかも知れない。

 ウブメ。石燕の「姑獲鳥」は女性の姿だ。それ以外に鳥だけの意匠を水木しげるが行っている。「産女」なら他にも図版はありそうだ。響鬼に置いては深海魚に羽根の生えた姿になっている。故事を見ると女性の姿は「姫」に預けている。確かに姫の衣装は洋装だが下半身を赤くにじませた姿で姑獲鳥ぽい。

 ヤマアラシというのは表記上はなかったと思うが、山颪(やまおろし)である。これは「豪猪」との関係が石燕の図版にも描かれている。「豪猪」は何かと言ったら、ヤマアラシのことだ。石燕の図版は頭に針の鎧を被ったような人型の妖怪として描かれているが、響鬼のモチーフでは牛とやまあらし。なぜ牛が絡んだのかは良くわからない。

 オオナマズはそれと言って何があるわけでもなく、ナマズじゃなくチョウチンアンコウと掛け合わせたのはよく分からない。もとが何らかの動物や植物の怪異だったりするとそのままというのは仕方ないのかな?飛び出してきたのがワイヤード胃袋という設定には驚いたけど。

 アミキリは似た妖怪にカミキリが居るが、そのカミキリと名が似た昆虫カミキリムシ(ただ羽根だけ)と見た目が似ているエビを合わせたデザインで、もとの妖怪に似ている度はツチグモに継いで高い。

 ナナシに関してあの姿に当たるモノはないだろう。名前だと「千と千尋の神隠し」の
カオナシを思い出すが・・・まさか宮崎アニメに根拠を探したはずはない。

 ドロタボウは一つ目を避けているが本来の田から出てきた妖怪そのまま。特に何のひねりもないと思う。複数ぬいぐるみを作る必要もあるので、あまり凝ったデザインにも出来ないのだろうか?同じヤツを複数というのは「仮面ライダーブラック」クモ怪人を思い出す。あの番組の時、高寺Pはスタッフにいたはずだなぁ。

 カッパは皿がないカッパだと責めてる人がいたが、皿があるなしに関しては実はカッパの必須アイテムではない。しかし、お皿が分かりやすいデザインであるのは紛れもない事実で、妖怪馬鹿トリオの対談でも指摘されていたが、鹿児島の川内がらっぱがカータンの意匠で描かれていたりするともうがらっぱは居ないんだなとヒシヒシと感じる次第だ。(まとめられて統一概念の「かっぱ」に変じている。)デザインソースはカエルとスッポンと言うことであれば、納得である。そういえば昔「ガッパ」という怪獣映画があったが、神奈川方言ではカッパは「ガァッパ」と発音するらしい。でもアレはカッパよりはカラス天狗っぽいな。

 バケネコもそうだが夏の魔化魍は腹筋割れてるんだよな(笑)猫又はシッポが二つじゃないのかと言うが、どうも「妖怪」を再現することを目的にしているわけではないみたいなので、そこまで目くじらたてないこと。それだったらオトロシの頃に文句を付けるべきだ。

 それ以外に劇中で写真として出てきたオオクビは腹がデカイ蜂として描かれている。専用機のテレビゲームでは動く姿も拝めるようだ。その腹に顔のような模様がある。

 明日は鎧を着たツチグモが登場!噂ではテングが出るという。個人的にはテングは鬼と対を成す存在であって欲しいと思っている。例の品の良い(笑)二人もし凄・橘と関係があるならば・・・彼らがテングに?(後日哀しい結果に(^^;)

 響鬼では鬼は修験者の延長のように描かれている。天狗もその意匠から修験者と関わりがあるモノとして伝承されている。鬼は式を打つことからも陰陽道との関連も感じられるし、一之巻で蘇我入鹿を「カエルのうた」に乗せて歌っていたのが意図的なのでは?などと考えると、響鬼達の鬼の紋章マークのベース「三つどもえ」は単に太鼓によく使われてるからと言うだけではなく本当に藤原氏のことと関連があって、背表紙記載しか明らかになっていないが、「凄・橘」の橘は藤原氏と対抗していた橘氏のことではないかと思われてくる。蘇我入鹿も藤原氏から討たれたわけで・・・。

 そういえば最近、有名になった陰陽師安倍晴明は橘氏との関係があったと言う話もあり、今後どのような「装置」をもって「響鬼」が展開していくのか非常に楽しみだ。

 こう言うところを読み下せるのも響鬼ならではの楽しみかな。

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コメント

 考察は今後、勧めていっていずれ妖怪の同人誌の記事にでもしようと思っています(笑)
 仲間内では水木しげるが作ったモノも水木さんが妖怪化してきたので、妖怪で良いかなどとゆるい感覚でいますので、大人の事情が有ろうが無かろうが今までと違ったモノをと言う点での意気込みはかっています。

 映画の感想については、長めのコメントを入れさせてもらいました。

そうか。
響鬼のマカモウが、あまり妖怪らしく見えないのには、いろいろ理由があったんですね。勉強になりました。
そして、確かに土蜘蛛の再登場は、いろいろ物語の展開上も意味がありそうですね。
TB、させていただきました。

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