「奇談」インプレッション
「奇談」を見に行った。客の入りはさんざんな状況で、土曜の昼下がり、旗艦劇場であるにも関わらず、あの入りでは余り良い結果は得られないだろう。
ただ、映画自身は思ったよりは良かった。見た後評価に困る映画ではあるが、"頑張ったで賞"くらいは上げられるそんな出来だ。同じような環境に「姑獲鳥の夏」を見た後、置かれたが、あちらは既知の監督であったと言うこともある。そう言う意味ではあの程度の映画しか撮れないというのは問題なのだが(先日のウルトラマンマックス「胡蝶の夢」もひどかった。実相寺監督はああいう世界に浸りきって出てこられなくなってしまったのか・・・)表面上はひどく逸脱していたわけでもない。勘違いは多かったし期待はずれだった分、落胆も多かった。(原田知世があんなに可愛くなく見えるなんて、意味のないキャスティングだ。)
さて、今回の「奇談」も表面的には原作を外していないが、元が非常に短編であるため色々と付け足されている。その付け足されているところが、ことごとく問題があると言う構図になっているのが残念だ。そうでない部分はなかなか良くかみ砕けていた。
あと、キャスティングの妙はあるだろう。
稗田礼二郎は原作とはキャラ違うが、安心できる演技だった。重太(神戸浩。この人はこの手の役が非常に上手いね。)、神父(清水紘治。相変わらずケレン味の強い演技で・・・)、住職(一龍斎貞水の流暢な職業病的喋りはネタというかサービスだろう。言い終わった時、暗転して顔に赤いスポットライトが当たるのではと妙な期待があった)、三じゅわん(3人のヨハネ)の一人・・・白木みのるはすでに70歳台だと思うが、本当に怖かった
原作では単純にあの村で出会った奇妙な人物構図から始まるが、稗田礼二郎以外に主人公を設定してしまった為に余計な「神隠し」事件を背負い込ませてしまった。この破綻を何とかクリアしようとして最後までもがくが、終わった感想から言えば、この神隠しのエピソードの縦糸は意味がなかったというか、要らなかった。
個人的には、ちすん(グランセイザーの第2クールの敵役で知った。もうすぐ朝のテレビ小説に出演予定)は好きなのだが、本当に蛇足にしか成らない役どころだった。
あと主人公の女優は朝のテレビ小説「天花」の主人公だった人だそうだが、昔の印象とかなり違うような。ただ、1970年代ぽかったとは思う。(時代設定は良いのだが、オーパーツが出てきそうでとても不安だった。)
また、そんな別軸の話を絡めたために話の破綻が大きくなっている。何故か神隠しされたのか、何故戻して欲しいと願ったのか、何故一緒に行ったのか全て謎のまま置いてきぼりだ。
シーンとしても"いんへるの"を覗くシーン、"ぱらいそ"に行くシーン、最後のエンディング2つ(これこそ本当に蛇足だ)もうちょっとこうしたらと本当に思ってしまう。
もっと"ぱらいそ"に行きたい感じが欲しかったな。
この話、一件小難しい話をしているように見えるが、アダムとイブ以外に人類の祖が居て、それが"じゅすへる"と言う名。その子孫がなぜだか東北の過疎村にいて、それが救済されたという話である。それをミステリー仕立てにしただけ。
身構える必要はない。一般教養レベルで対応可能な内容だ。シンプル故に原作初見の時には度肝を抜かれたのだが。
それにしても「奇談」なんて変なタイトルになったのは何故なんだろう。
映画としてはシナリオに難があるが、ファンが見る分にはまだマシかな?シーンシーンには見るところがあるので劇場で見るに越したことはないけど、絶対行けまでとは言えない映画だった。
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