「鴉-KARAS-」インプレッション
テレビで放映したので既刊の3話まで見ることが出来た。おそらくこの機会を逃すと今後感想を上げることがない(つまり見ることがない)と思うので、感想を上げておこう。
かつてはタツノコプロはタツノコだから見ると言うファンが居る、老舗の実力派アニメプロダクションだった。しかし、(制作という点では「エヴァンゲリオン」までだろうが)実際には随分前からその凋落は始まっていた。多くのオリジナルアニメで人気があったが、マーチャンダイジングの失敗か、なかなかうまく浮上しない。出て行った人には今もカリスマ性を感じる人が多いのにだ。オリジナルキャラ創出がうまくいかないと言ったらいいのか、柳の下にドジョウは何匹もいないと言ったらいいのか。
単発で評価に値する小品を出しはするのだが、商業的には成功していない。かろうじて、マクロスやエヴァンゲリオンの資産(つまり他人のふんどし)、或いは過去の著名キャラクタービジネスで食いつないできたという感じしかしない。
「鴉-KARAS-」はそのタツノコが3Dアニメと2Dアニメをふんだんに使った新機軸とすべき40周年記念を唱った代表作にすべき作品だった。しかし、見た印象を言えばOVA黎明期によく見られた不可解なイメージを持たせた、何となく雰囲気だけはあるダークヒーロー物で新しさはない。主人公、鴉は素体が分離したキャシャーン、あるいは素体が瀕死のイッパツマンてとこのようだし・・・敵も妖怪モチーフなのだが解釈(使い方)にも何ら新しさがないし、その上、売りにも思えるデザイン的にもハッとする物が無いのだ。
また、暗い画面のアニメにありがちなのだが、光が走るだけで、何をしているかが全然描写されない。或いはしてあっても全然分からない。そう言う所には下手くそな感じすらしてしまう。今回、かなりコントラストがあるモニタで見たのだが、それでもさっぱりだ。タツノコと言えば、ニクイほどリアリティのある動画を期待してしまうのだが、それが全て闇の中である。こういうのは正直言って手抜きとしか見えない。
それに今回の売りである、2Dと3Dの親和性が良くない。無駄に3Dを使用しているシーンも多く、ものすごくガッカリさせられた。
3Dアニメを取り入れると何故かやってみたくなるのだろう。形が分かりやすい物体、建物だったり、木だったりをむやみやたらに回り込んで見せる演出が鼻につく。「ブラックジャック」のテレビ版オープニングでの岬の家のシーンと言えば分かってもらえるだろうか。あれが何回出てくるのかと言うほど出てくるのだ。(個人的にこのシーンが出てくるアニメはそれだけでダメアニメと言っても良いくらいだ。)3Dを使ってやることが、あんな事ばかりなら自分でパースを考えてやってくれた方が見る方は感動する。少なくともタツノコのオリジナルアニメだとして見るような人ならば。
3Dアニメを否定する気は更々無い。今現在、私が最後に絶賛したアニメが「ミスターインクレディブル」であるので、否定できないのだ。使い方さえ間違えなければ、必ず評価したい。それにそこまで行かなくとも、国産の量産アニメに「ZOIDS」など好例は幾つでもある。使い方が悪すぎるのだ。今更なのだ。もう、このレベルの実験を商業ベースの作品で見せている場合ではない。ドンドン、技術も技能も上がっていくのに、何を足踏みしているのか。
単なるCGクリエーターは必要ない。CGを使えるアニメーターが欲しいのだ。
こんなことでタツノコは本当に残れるのだろうか?旧タツノコファンはどう思っているのだろうか?不思議に思った。
タツノコ作品で最後に良いなぁと思ったのは、NTT東日本のSMAP版「ガッチャマン」のアニメ版。本作の監督作品でもあったはずだ。旧作の威光にすがるなら、あのくらいやってくれないと、適当なやっつけ仕事は時代遅れすぎるよ。
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コメント
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コメントありがとうございます。
自分はアニメだと実写ほどにはシナリオの所為かどうか分からないですね。最初のネタや設定の提供レベルの物が多いし、ほとんど絵コンテ段階で作り替えられてしまうことが多いので。
ただ、お話がお粗末なのは私もそう思います。
結局のこりの3話で完結できたんでしょうか?>「鴉」
投稿: Ja-bow | 2010.06.06 11:46
脚本が素人レベルでした。
会話9割で話を理解させるラノベ作家の方が遥かに力量が上
投稿: | 2010.06.03 21:16