「後巷説百物語」インプレッション
個人的に待望の新書版「後巷説百物語」。読了した。
ドラマ版である「怪」の「赤面ゑびす」から逆に出来上がった冒頭の「赤えいの魚」は「赤面ゑびす」をはめるために持ち出してきた感じだった。主役はやはり「ゑびす」なのだ。いわゆる京極堂との関連は分かる人には分かるという程度の話。「陰摩羅鬼の瑕」に繋がっているだけのことだ。目立つのは「陰摩羅鬼」と「青鷺」の関わり・・・。そして「鉄鼠」「狂骨」。確かに又市は「嗤う伊右衛門」「覘き小平次」との関連があるわけだが。
でも、それはこの話の味付けに過ぎない。知っていればもう少し面白い。そんなところだ。
「巷説百物語」「続巷説百物語」「後巷説百物語」(連載を読むと渇望感が強く成りすぎるので単行本・・・出来ればノベルズで読むようにしている)と読んできたが、このシリーズは京極堂シリーズと同じく、普通の人(京極堂シリーズでは鬱病の気はあるが関口、今作では山岡百介)を狂言回しにしている。しかし、関わりは少し違う様にしてあり、百介は割と積極的に関わろうとするのだ。しかし、導入の第一作は「帷子ヶ辻」と言ったショッキングな事件で仕舞われ、第二作はドラマ「怪」の「七人岬」をモチーフに北林の悲劇を描き、普通の人と御行又市らのけじめが着けられる。
哀しい別れのようだが、百介を救済する優しさを感じ、何となくだが暖かい気持ちになる終わり方だった。
第三作に当たる今作は、そのことの確認のための話と言っていいだろう。
最後のチャプターに入る前のページのあの台詞で思わず泣けてくる。「あざといなぁ」と思いながらも絶妙のタイミング。そしてラストシーン。百介の幸せそうな姿は、「魍魎の匣」の男を思い出す。
京極堂シリーズよりも「妖怪」への直接的チャレンジがあり、個人的にはこちらの方が好きだ。1本が短いのも良いかもしれない(笑)
しかし待たされた。待たされたと言えば「邪魅の雫」はこのままだと1年遅れになるのか?(まぁそれも出版社としての話で京極夏彦はつゆほども思ってなかったかも知れないが)どこまで進んでるのだろう?最近は予定リストが多いと逆に可哀想な気がする。仕事好きだなぁ。
巷説シリーズをちゃんと読んでる人にはお勧めの一作だ。
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