洗剤についてもうちょっと
衣類洗剤が何を落としているか考えたことがある一般の人が何人いるだろうか?
「何って?汚れじゃないの?」
そう言う反応が普通だと思う。じゃあ「汚れ」って何ですか?こういわれると少しずつ困ってくるはずだ。要は衣類が販売状態になるべく近くなるようにする作業をやっている訳なのだが、すなわち最初に付けていなかった、色や匂いの素になる物を衣類から排除するのだ。
例えば色、染料で染めたもの等に置いては昔から洗濯時の色落ちが心配されていたわけだ。後から付いたシミなどとどうやって元から付いている物を区別させて落とすのか、その辺りが洗剤の重要な機能になってくるわけなのだ。
油汚れとかタンパク質の汚れは落ちる落ちないに関係なく異物にしやすいから、その機能を純然と高めていくことで対応してきた。酵素配合なんてのもタンパク質分解酵素やらを洗剤中でも効能が落ちないように仕込むことでより異物を切り離しやすくしていたのだ。
ただ、「アタック」登場以降は少なくとも国内では様子が違う。このアタック、以前、ブルーバックスの「コロンブスの卵―ヒット商品は、こうして生まれた」だったと思うが、その開発の記事が書かれていたのを読んで驚いた。
アタックは白さを強調する為に蛍光剤などを使っている(使っていないアタックもある)のとは別に、画期的な発想で洗剤を作っていたのだ。
衣類は使ってくればどうしてもその繊維が解れ、目に見えないほどではあるが毛羽立ってくる。その毛羽によって表面の光沢感や色目が濁るのを防ぐことを目的としているのだ。
そのために探していたのが、洗剤中でも昨日するセルラーゼ、繊維を分解する酵素だ。
つまり、衣類の毛羽(毛羽になることによって少し本体繊維と様相が違うのだそうだが)を衣類繊維から切り離して、誇張すれば、衣類自身を溶かして白さを際だたせているというわけ。この辺はおそらく後発の開発でも同じようにやってきているのだろうから、基本的に同じ機能の物が多く出回っているはずだ。
まぁ毛羽の部分はいずれ衣類から離れ綿埃の素にでも成っているのだろうが、わずかながら衣類が傷むのが早くなっているかも知れないという疑惑は残る。
もっとも、アメリカ辺りの高性能で高価な洗剤の比ではない。あれは日本では考えられないほど"汚れ"を落としてくれるのだが、繊維の柔軟さも同時に著しく損なわれていくし、この辺は衣に対する習慣の違いだろうけど、日本のようなペースでは衣類を使えないだろう。
また、経済先進国の中では日本の衣類用洗剤は素晴らしく安い方だと言うことも覚えておいて欲しい。P&Gという日本有数の企業、花王と比べても遙かに巨大なメーカーが日本では主力の洗剤を販売できない。実売で3倍以上の開きがあるのだ。そこで日本用にはコストを削減したサーフやボールドのようなサブブランドの展開にとどまっている。
いずれ何らかのP&Gの仕掛けもあるのだろうけど・・・
「トップ」のCMから洗剤について2考してみた。色々考えるべき事はこんな処にもあるのだなと感じてもらえたらそれで良い。
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