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2006.05.13

「小さき勇者たち~ガメラ~」インプレッション

 結果から言うと、行く前の私の懸念はそのまま当たり、印象は変わらなかった。良くも成らなかったし、悪くも成らなかった。

 これを「子供向けだ」という人たちがいるようだが、それがこの作品を褒めるために使われていても揶揄されるために使われても、ちょっと子供に失礼ではないかとも思った。

 私が見た劇場では席数の1/5以下の入り、ほとんどが子供とその随伴者で、何人かは私みたいな人が混じっていたようだ。売りたい映画である「ダヴィンチ・コード」も始まるし、スクリーン確保のために、この劇場では来週には打ちきりかな?

 さて、私はと言えば、見始めて、主人公が墓参りをするシーンでもう落胆の影が見えてきて、その後は落胆を蓄積するだけ蓄積して疲れてしまった。

 ストーリー上の大きな破綻は無いが、おかしな事はいくらもあった。「怪獣」が出る「あり得ない話」だからこそ大事にリアリティを積み上げて欲しいのだが、それが出来ていない。意図的に省いたと言うには無駄なシーンが多く、やるべき事をやらずに、やらないで良いことをやってる感じがひどくする。

 例えば、内閣府の参事官や雨宮博士の件はばっさり切って良いだろう。ストーリー上その存在が大事ではない。緋色真珠がガメラのパワーの源であることの裏付けと最後の子供がガメラへの自衛隊突入を阻止するシーンとの絡みがあるので出しているんだろうが、それは主人公の思いつき(ただモノローグで説明するのはやめて欲しかった。)で押し切って良かったし、唐突でも自衛官や警官の姿をした人が突入するのを阻止するだけ、十分だったろう。実際にかなり自衛官達は今まで何をやっていたのか知らないが、唐突に現れるんだし。彼らをただ悪者を作るだけに出してしまうのは無駄だ。これをからめての主人公の心の変化の描写もないので、単にこう言うのを入れないとリアリティがないという強迫観念みたいなもんで入れたようにしか見えない。

 逆に変だと思うことが多々あったのだ。これが私が乗れなかった理由だ。ちょっと目立ったところを上げておこう。

 1973年のガメラ対ギャオス(ギャオスの呼称は無かったと思う)の際に離れ小島になった所に光る赤い光点。これを目指して主人公が海を渡りトト(新生ガメラ)の卵を拾い上げるのだが、赤い光に惹かれて行ったのに、その赤く光る台座(後にガメラのエネルギーの元になる事が分かる)には目もくれず、その上の白い球(卵)を拾い上げたのが変に思った。二つを手に取る或いは、一体にしたままで拾い上げるなら行動として分かるんだが、卵だけ拾い上げるのは、都合良すぎの気がした。もっとも後で拾って持って帰ったのだが、こういう動作の「?」ってのは本当に気になってしまう。

 また、こんな事が気になったヒロイン(演じる夏帆は三井のリハウスのCMで有名な美少女。ケータイ刑事でも主人公を演じていた。)が病院に入院する件。以前から分かっていて準備していた心臓疾患の手術のため、入院する。入院後、1日で手術、その翌日に運ばれた避難場所から、上記の赤い台座をガメラに届けようと点滴を抜き、ベッドから抜け出し、歩き出す。

 確かに心臓手術ってのは、お腹を切るわけではないので、意外に早く歩行訓練が開始できたりや他の部分が強い人だと入院期間って驚くほど短いのだが、胸骨を切った人間があんなに、すぐには上半身を使って行動出来ない。(1kgの物でも手に持つのが大変なくらいの状態になってる)それに開胸してれば、たいていの場合、半日は術後も含めて手術室の中、その後1日は集中治療室のようなとこでしばらくは一般病室に戻れない。かなり頑丈な人でも上半身に負荷をかけて歩くのは難しい話だ。心臓のドレーンが刺さってるしね。だからまぁ、好意的に見て、おそらくカテーテル手術なのだろう。それでも、よほど緊急なのことがない限りこんなスケジュールにはなるまい。・・・そのときは全身麻酔になるかなぁ?

 狭心症の風船治療などなら、通常は大腿の付け根からカテーテルを入れるので、その下準備があるし、大腿の付け根は歩くとすぐ開いちゃうので、拘束して緊迫されたような形になってしまう。肩の方だったら又そういう格好になってるはず。

 小さいこと気にすんなよと言われそうだが、これだって要はシナリオでうかつに「心臓が・・・」なんて台詞を入れなきゃ良いのだ。入れなくて「何か重篤な病気」であれば良いのに、変にリアリティを作りたいので入れちゃって、こんな齟齬を生じる。これも最初はヒロインと主人公を直接親交があるようにして、あの赤い台座を受け取ってもらう都合作りに見えちゃうんだよなぁ。

 さらに、トト(「とおる」を「トト」と普通呼ばないのでこう言うのも違和感があるのだが・・・まぁこれは目くじら立て過ぎだろう)を飼っていることを秘密にしている3人のウチ、一人は敵怪獣ジーダスが人間を餌食にしているのを目の当たりにしてるかのような描写がある(かなりの血を浴びている)のだが、その後の彼にモチベーションの変化はなく、兄にくっついたままとは言え、普通だったら怖くて怖くてしょうがないジーダスもいるガメラの方へ向かうシーンがラスト近くにある。この二つのシーンの整合が私は取れなかった。(その恐怖を打ち返すような葛藤の描写が有れば分かるんだけど)

 そして最後への流れが、私にはどうもしっくり来ない。

 ガメラに赤い「お守り」を届けるために子供達がみずから望んでリレーしていくのだが、何故「トト」と分かったのかは、ヒロインの声が聞こえたことにしても、最後に3人組のうち二人に渡り、彼らから主人公に渡されるときに口にする台詞で、みんながリレーして届けてくれたというのが、これが状況からしてあり得ない。それが分かるのは映画を見ているこっちの側の私たちだけであって、個々の人間は手渡すときに某かのことを伝えている描写もないのだから、その前後しか分かりようがないのだ。

 例えば、これは最後にぞろっと出てくる子供達(リレーしてきた人数よりも多すぎると思うが)が彼らの後から走ってくるような描写が有ればそれで分かる。超常現象的でもガメラと交信してしまうようにしたり、なにか不思議な力に突き動かされたのならそういう描写を入れれば済むだけなんだがそういうところは見あたらなかった。

 そのためにおそらく最も感動的なシーンとして仕組んだ子供のリレーすら、単なる都合作りにしか見えなかったのが残念だ。

 上記のような首をかしげるシーンはさらに細かいこともあるのだが、それぞれは都合良く解釈して目をつぶれば十分齟齬は見えなくなるだろう。しかし、全体的に時間経過に関してあまり気を配っていないし、上記のようなことが数が多すぎて、首をかしげながらずっと見る羽目になって、前向きに脳内補完出来ないまま終わりまで来てしまったのだ。それも要らない部分を切ってしまえば十分に盛り込める程度の尺だったのに何故そういう風にしてしまったんだろうと思った。

 特撮シーンには目新しさは感じなかった。ジーダスがガメラと橋の上で戦うシーンもジーダスがどうして腹を向けたまま上に上がって、舌攻撃したのかも理解出来なかったし(体が太い怪獣ならまだしも細身なので間に入って舌攻撃で良かったはずだ。)回転飛びはオリジナルからの引用なので仕方がないとしても、火球の演出が多少変わったぐらいではどうも。平成三部作のウルティメイトプラズマ似の自爆もそれほどインパクトはなかった。オマージュはオマージュとしておいておくとして。

 本編が余り真ん中にバランスの軸を持ってこないのに、特撮シーンは真ん中にバランスの軸を持ってくるという画面上のレイアウトのアンバランスも気になった。この辺は特撮演出と本編監督のコミュニケーションの問題だろうか?

 なお、ガメラのデザインは未だにしっくり来ない。可愛いからイヤなのではなく、自分の感覚からするとあれは気持ち悪いデザイン。黒目がちな顔でどうして大きいのを作らなかったかなぁ。白目があるのが最初のリアルな物から変貌していくと気味悪くて仕方なかった。なんか可笑しいんだよね。リアルな陸ガメの選択をした段階でそういう検討はされなかったんだろうか?

 といった諸々のことがあって、私はどうしても最後まで喜んでみることは出来ず、苦痛が残った。

 実際の話、ストーリーの破綻の大きさは平成三部作の方があるかもしれない。しかし、平成三部作は特撮が毎回驚きに値する出来だったので、途中でそれを消し飛ばしてくれていたのだ。だからトータルで見て評価は今回の方が低いまま終わった。

 また人数が少なかったこともあるが、子供の反応もイマイチ。DVDやグッズの売り上げまで入れても次回作を作れるほどの成績になるだろうか?心配だ。今回のガメラのテイストでの次回作は要らない。また平成三部作と同じような物ももう要らない。もうちょっと違った形でアプローチしてくれる新しい物ならガメラを見てみたいと思った。

 ちなみに断るまでもなくこれは私見である。楽しめた人は良かったと思うし、楽しめなかった人は次に行こう。

P.S. ジーダスvsガメラはガメラ対ゴジラの意趣替えじゃないかと思っていたのだが、果たしてどうだろう?ゴジラに襟巻きを付けたジラースとジーダス・・・絵面など気になってしまった。こんな事で遊んでいるならもっと本編をまともにして欲しいのだが、未確認なのでメモに留めておく。

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