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2006.11.24

「父親たちの星条旗」インプレッション

 立て続けに動揺を誘う事柄があって、観た映画の感想を上げるのを忘れていた。

 見終えて思ったのは、この作品はもう一つの「硫黄島からの手紙」を見なければ意味がないのかも知れないということだ。

 「ハンバーガーヒル」以来(もう20年経つのか)、本当に久々の戦争映画の劇場鑑賞だった。漠然とした印象だが、この「父親たちの星条旗」はインタビューシーンがあったりしてドキュメンタリーの挿話のような仕上がりで、大きな起伏もなく淡々と進み、淡々と終わっていく。時系列を混乱させる演出を利用して、主人公3人の周りにちりばめられた人物を記憶にとどめる工夫は感心するが、何かが解決したり救われたりするカタルシスがあるわけでもない。役者のクリント・イーストウッドからは想像できない仕上がりだ。

 その中で自分の心に去来したのは、資本主義のツケを貧困層にまわすやり方、人殺しを常態化した戦争での個人の非力さ、戦うために戦うという恐怖のマッチポンプ、それは今も昔も同じなのだと言うこと、そしてそのむなしさだ。

 そして、このテーマをオスカー受賞監督二人が、映画化にこぎ着け公開した事が意味がある。

 ブッシュが共和党、中間選挙で敗退した事から分かるように、アメリカは立て続けの戦争に疲弊している。ブッシュ達のロジックは当時の政治家達と代わりはしない。(民主党大統領に変わってもどれだけ変わるのかは分からないが、)だから今これが作れる環境になったのだろう。そう言うことが織り込まれているように思った。

 しかし、それならば「硫黄島からの手紙」は必ずしも要らないし、本作をもう少しドラマティックに扇情的に描けば、事足りて反体制の映画に出来たはずなのに、そこまではしなかった。そこに何か意味があるように思うのだ。

 題材は有名なピューリッツア賞受賞の硫黄島でのアメリカ国旗掲揚の写真から取られた。原題が「FLAGS OF OUR FATHERS」と複数形なのは、ご存じの通りの理由なのだが、その顛末も織り込まれている。しかし、それが結末ではないところが、この作品の素晴らしいところなのだと思う。

 昨年から今年に掛けて、大作の日本製戦争映画が多く劇場に掛かった。だが、このような作品を日本映画で作れるだろうか?もし出来るなら見てみたいと思った。

 今作を見て「硫黄島からの手紙」に俄然興味が出てきた。是非劇場に足を運んでみたい。

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