「パプリカ」小説版インプレッション&映画版インプレッション2nd
原作小説(新潮文庫)を読んで、映画を見た後のモヤモヤは解消した。
映画は精一杯、原作の奇妙な世界を表現しているし、的はずれでもない。ただ素直に評せない大きな2点があったのだ。
1つ目はあのスタイルのアニメでは解消しきれないと思う。端っから夢と現実が親和していて、だんだんと浸食されていく感じがあまり脅威に感じなかった。コレはアニメならではの出来事だと思う。小説では最初は分離している意識がだんだんと混濁していく様が面白いので、最初のビックリ感がなかったのが残念だ。
2つ目はラストのオチである。オチと言うよりも、触れなかった部分だ。ただコレも小説の流れを読むと映画のストーリーラインでは表現しにくい。
いよいよ現実と夢が混交して、建物が倒壊したり、氷室が死んでしまったりと被害が出るのだが、全てが無くなった後、小説では実被害の罰を現実世界で乾に与えて終わる。そして或る意味片棒を担いだ、時田と千葉についての罪と罰はどうなんだと思ったところで、第二部のチャプター27が出て、読者を煙に巻くのだが、映画では時田と千葉の結婚については分かるのだが、それ以外の情報が明らかでないので、あれだけの騒乱の始末が着かないままに終わっている。
登場人物の設定が違うことや小説のエロチックな表現が使えなかったのは、公開条件や尺の関係などで許容範囲だと思うし、原作を知らなかったのだから引っかかりようがない。それに上手く取り込んでそれなりに消化していると思う。
だが、この結末については別で、映画にはチャプター27を使うための前置きがないし、あの長さでは絡めようもない。でも私のモヤモヤを解消して貰うためには、他の手段でも良いから、乾と小山内の結末だけは付けて欲しかったのだ。
総じて作画レベル、画面演出などに関しては本当に良くて、劇場で見ることをお奨めする。
でも多分、原作を読んでない多くの人は、小説を読みたくなると思うのだ。特に2つ目のモヤモヤはたいていの人に出てくるのではないだろうか。
それにしても、筒井康隆って本当に凄いなぁと改めて思った。特に好きだというわけではないけれど、侮っていたわけでもないけれども、小説を読み終えて、素直にそう思った。
断筆を撤回してくれて良かった。
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