net@valley

　全体的な雰囲気はあったと思う。でも惜しいことばかりで・・・

　まず惜しいのは機材の所為か監督の好みか、粒子感のある映像になっていた事。つまり荒い画像なのだ。自然現象を撮るためにかなり待ったと思われるシーンがあるのだが・・・その辺に理由があるだろうか？もう少しなめらかな画像の方が自然の偉容を伝えられたのでは？

　メインキャストは江角マキコ以外は良かったと思う。江角マキコは多分、自分が持ってるキャラしか演じられないタイプの役者なので、それをハメきれなかったキャスティングが問題だと思う。オダジョーは予想通りの好演、蒼井優はかわいらしかったけど、うなるほどではなかった。素の感じと演技の時が印象が大きく違うので、作りきれるとは思う。

　また、ところどころ台詞に難があったと思う。たとえば淡幽の危機に「衰弱」という言葉があったが、状況から考えて、なぜ「弱って」でいけないのかが、よく分からなかった。「衰弱」という言葉は昔から存在していたのかも疑いたいけど、それよりも何よりも人間、動転しているときほど言葉は簡単になると思うのだ。これが台詞押しで行くような演劇なら分からなくもないのだが、この映画にはそぐわない気がしたのだ。多分この辺は脚本段階でのキャラ設定がうまく行ってなさそうだ。

　そして、一番の弱点はプロットだろう。特に原作を知らないので原作内事実と反するかも知れないが、あえて書いてしまうと、最後の別れは順番が逆の方が良かったと思う。余計なお世話なんだろうけど。

　ラストの淡々とした別れは良かった。でも絵としては逆の方が絶対、絵になったと思うなぁ。

　蟲師はプロフェッショナルだ。やや特異な能力を持っているものの、人と蟲の棲み分けを補助しているだけに過ぎない。そういえばこれはあの"鬼"に似ているのか。あるいは逆かもなぁ。

　実写版は制作に時間がかかりすぎたから次はなさそうな気がする（少なくともスタッフはこのメンツではしんどいだろう。）アニメの劇場版の噂もあるようだけどどこまで本当なのかも分からないし、取りあえずは原作かアニメ版を見て確認してみようかな。

　この映画を見て、ほとばしるような物は何も無かった。でも、色々と思い出した事がある。それは自分の懐かしい部分にある物だという事だけは間違いがない。

　ここに書いて表せるような物でもないのだけれども。

　ともあれ大友克洋監督作では一番良かった作品だと思う。でも、ただそれだけとしか言えない。

P.S.菜箸（と書くのかな？）で文字となった蟲を封じる淡幽を見て、先日初午祭に行ったばかりだったから、すこしニヤリとした。