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2007.05.01

「ゲゲゲの鬼太郎」劇場版インプレッション

 今年の妖怪物連発の中で、どんなに不安があっても外すわけに行かなかったのが「ゲゲゲの鬼太郎」だ。

 ちなみにパンフにも書かれていたが、原作者水木しげるの評によれば78点。一反木綿のところは80点だそうだ。「怪」の京極夏彦の情報によれば水木翁は80点以上の点数をくれることが無いのだそうで、ほぼ満点の意外な高得点だ。パンフには合格点が80点と話している。

 その上で「鬼太郎」自身にはかなり、憤慨していたらしいと漏れ伝わっていた。パンフレットによれば「(鬼太郎の怪しさを出すには)背が低くなくてはいけない」と言っていたようなのだが・・・さて?

 見終わって言えるのは、この映画は、後で見るようなものでもない。見ずにDVDを買うなら無理しても旬のウチに映画で見ておくことだ。レンタルならまだ分かるが・・・。

 今回の妖怪って結局、出オチの芸人だ。少なくともこの映画ではそうだ。しかも「妖怪大戦争」より数が少ない。だから妖怪好きには少し物足りないかも知れない。公式の図鑑に書かれている妖怪も結構居るのでもう少し見せて欲しかったなぁ。しかもハッキリ顔が分かる妖怪は基本的に役者そのもののキャラクターを演じていて、今まで積み重ねた妖怪のキャラというわけでもない。だからハマっていないと凄く浮いて見えること請け合いだ。

 映画の中では公式の図鑑に載ってない妖怪も出ていたし。(ヤマンバギャルの格好だったので多分山姥だと思うが、これが記憶に残っているが図版がどこにもない。)

 ちなみに話の前半は大泉洋のねずみ男が頑張って引っ張た。そこに空狐が絡み、後半につながるのだが、後半も本筋よりも西田敏行演じる輪入道の印象の方が強く残ってしまい、主人公のはずの鬼太郎は影が薄い。本筋が薄いからなんだろうけどこれは残念。

 全編通して、タレントが誰が印象に残るかを競っているような状況になっていて、そういう意味では「妖怪バラエティ」なのだが、段取りの悪い「バラエティ」なので、凡庸で手垢のついたシナリオの所為か、演出の所為か映画館にいるにもかかわらず茶の間で、ながらで見ているような錯覚さえ覚えた。

 本筋に描かれた二つの親子愛も、"一切"、感動を呼ばないし、鬼太郎と実花のほのかな恋も、戦うモチベーションとしての意味は分かるが、それだけの意味しか見いだせなかった。

 一昨年の「妖怪大戦争」のように「妖怪」を見せて祭り気分を誘うわけでもなく、筋をしっかり仕立ててドラマ見せるわけでもない。個々の役者自身はキャスティングミスは別にして、与えられた役目を頑張っていたのかなと思わせた。でもそれだけじゃ、ちょっと自分にはしんどかったのだが。

 この映画はとにかく一回見たらそれで良い。レビューを書いたり、妖怪資料を作るのでなければ見直す必要、一切なし(笑)という思う。だから逆にどうせ見るなら大画面で映画館で見た方が安くあがる。

 ただ、妖怪好事家同士で見たりする分には多分何の問題もなく、その後、ネタを語っても良いし、アニメが始まった今なら子供と家族で行くのはもちろん良い選択だと思う。笑えるところは笑えるから、そこは安心して欲しい。

 でもただそれだけの映画なんだけどね。

 以下キャラへの寸評

 鬼太郎
 やっぱり見た目が大人すぎる。彼が美形なので髪の毛針の使用後ネタは拾えるが後は・・・。彼自身の演技はちょっとね。後、ハゲたときのためにか両目があいている。

 目玉オヤジ
 これに文句はつけられないでしょ。

 ネコ娘
 変化(ヘンゲ)もするし、人間時の顔は可愛いし綺麗。なので毛糸のパンツ(風)やダンスとのギャップが面白いのだろうけど、「何も田中麗奈がやるこたぁないだろう」と思いながら見ていた。

 子泣きじじい
 どこをどう見ても間寛平にしか見えなくて、演技もへったくれもない。

 砂かけばばあ
 見せ場のところは砂太鼓(砂かけ一族の最大奥義)を見せるのかと思ったけど、カラス呼んでただけだったのは残念。

 ねずみ男
 演技は頑張っていたと思う。新旧ねすみ男の競演も見られる。(竹中直人は実写版ネズミ男を演じたことがある)

 ろくろ首
 YOUをわざわざ充ててたのは後半のネタのためだったんだけど、たかだかあんなネタのためにYOUが出なくても良かったんじゃ(笑)

 大天狗裁判長
 中村獅童は出過ぎでしょ?これも中村獅童である理由はあまりないけど、まぁ出オチだよね。まさしく。(そういえば今回はスパイダーマンの宣伝やらないのかな?)

 天狐
 途中からVieraのCMに移行しそうな感じさえしてた。綺麗だけど、独特の微笑みが演技の微笑みなのかこんな役を演じてるネタに対しての笑いなのか微妙な雰囲気だったと思う。

 輪入道
 おそらくMVP(笑)西田敏行の顔以外の何者でもないのだが、念力を使い出すシーンとか念力切れのシーンとか終始笑いをとっていた。

 モノワスレ(多分映画オリジナル)
 居ても居なくても話は終えたと思う。あまり意味を見いだせなかった。制作者が妖怪と人間の間に壁を残しておきたかったから使った裏技かな。

 ももんじい
 エンドロールに入って「ももんがぁ」と出てきて、ねずみに「ももんじいでしょ」と言われたのに笑った(笑)鼻毛針は出したけど、鼻もんもは無かったなぁ。神戸浩ってこういうのホントに良いわ(笑)

 いったんもめん
 柳沢慎吾だなと確認した程度。「ごわす」にすらイントネーション乗せないのは凄いなぁ。演技する気無いよね(笑)

 べとべとさん(と表記されている)
 非常にわかりやすくて良かった(笑)本当にそれだけなんだよなぁ。CGが安かったのが残念。声を石井一久にあてさせる意味はないと思う。

 公式サイト
 URL= http://www.gegege.jp/

 人間の役の人は意図して目立たない人を選んでるんだろうから、仕方ない。

 子役の内田流果は車両の中でちょっと、素に戻って緊張感が切れた演技があったが、子役としては頑張っていて大人を困らせる処の歯がゆさは出ていた。

 ヒロインの井上真央は図らずも「花より男子2」で今注目されているところ。毎日、みずほ銀行の前ででっかい顔を見てるせいで親近感があるし(笑)芸歴も長いのでしっかりしているんだけど、彼女に限らずツンデレキャラを充てられる若手女優が多い(と言うかとりあえずツンデレだったら受けが良いだろうくらいの感じ)所為か、今作の印象は"食傷気味"。

 あと貧乏という設定なんだけど、服飾だけは貧乏に見えないところが・・・。

 シナリオは最初の発表から3年13稿重ねたとパンフレットに書かれている。なんと無駄なシナリオだったことか。まぁ最初がまじめにやろうとして金がかかりすぎたりしたのかおしれないし、面だった話は出ていないが監督も替わったわけだから、そのまま受け取るのもおかしいのか。

 というわけで実際の映画批評の方はうやむやにしてしまうのであった。

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