「レミーのおいしいレストラン」インプレッション
まず見に行った最初の一声をば。
「俺にラタトゥーユを喰わせろー!」
まさかこんなに面白いとは思っていなかった。もっとだめだめだと思っていたのだ。
今作は「Mr.インクレディブル」の監督ブラッド・バードの最新作だ。
「Mr.インクレディブル」はここ数年のアニメの中でもっとも好きなアニメで、3Dアニメでは一番好きなアニメだ。そういう意味では自分にとっては「分かっている」監督で、その新作ともなれば期待するのだが、素材としてのネズミとレストランの組み合わせは「あり得なさすぎる」話だった。しかも動物主役と言うところもディズニーのイヤらしい博愛主義的部分をにおわせて、見に行くのを決めかねていた。それに今年公開のアニメで見に行った物はことごとく駄作だったのでその辺も尻込みの要因だった。
だから何度も映画館で予告を見ていながら、足を運ぶことを決めたのは公開2週間前のことだ。
虫の知らせじゃないが見ておいた方が良いような気がすると思ったのだ。
すでに予告編やCMで分かっていたわけだけど、この映画のネズミは静止画で見る以上にリアルな表現だ。それを話の流れで、悪く言えば、ごまかして行くのだけれども、そこで流れに乗れず、外に出てしまっちゃうと、きっとこの映画は辛口採点にならざる得ない。
映画ではネズミと人間以外の動物を明示的に出さないようにしたり、レミーがネズミ側と人間側で仕草が変わったりと言った工夫で、ネズミと人間というより、人種の違うもの程度の感覚にまで薄める工夫をしているのだが、それが通用するには条件が整う必要があるだろう。
乗れてしまえば問題ない。断っておくが、もちろん本当にネズミが居るようなレストランでは私も食事したくない(笑)そんなところだったら即座にブログで悪口を書く(笑)
今作でもCG技術は、また格段に上がっていて、重ね着した複雑な構成の衣装も、ちゃんと描いているし、この映画のキモである食事の表現に関しては、かなり良くて、おそらく実写でもここまで美味しそうなものは撮れないだろう。セル系列の2Dアニメでは多分、望むべくもない。
また、ネズミの大きさを表現するためのカメラワークもすばらしい。焦点の合い具合を計算にいれて、人間視点の時、ネズミ視点の時、使い分けを上手くしている。突飛なアングルのカットがあるわけではないが、3Dアニメだから実現出来る映像も作り出していて、こういうのを見ていると、「3DCGだとすぐにグルグル回り込ませたりする馬鹿なシーンを作っちゃう奴らはこれを100回くらい見てみろ」と思う。
それに好感が持てるのは3Dアニメでありながら、モーションキャプチャなどではなく明らかに人間が創造した動きで、アニメとしての楽しさを追求しているところが、好感を呼ぶ。狭いキッチンであんなに面白いことが出来るなんて・・・。
とにかくブラッドが参加して18ヶ月でこの映画を仕上げたのは驚嘆する。いかに以前の企画が有って、ある程度進行していたとはいえ、主人公のキャラクターからほとんど組み直したわけだし、この完成度は恐れ入る。しかし、(ピクサーとしては)短期間での作成はノリを産みはしたが物語の細部の作り込みには少し荒さがある。
だから、先に言ったように、ごまかされない人も結構出て、評も割れそうだ。
興行成績はそれ以上になるかも知れないが、「Mr.インクレディブル」や「Cars」を超えたかと言えば、それは無理だろうと思う。ただ、今やってる「シュレック」や暮れに公開される同じディズニーの「ルイスと未来泥棒」よりはずっと楽しめるんじゃないかなぁ。
それにしても、あんな美味そうなラタトゥーユはどこに行ったら食えるのさ。
それからもう一つ。
毎回、併映が入るピクサーだが、今回の併映は今までで一番面白かった。
「リフテッド」
一発ネタなので、中身は書かないが、少なくとも私が見たときの客の反応は笑いの密度が本編より高かった。
P.S. この映画で一番だめだめだったのは、人間側の主人公リングイニの声の佐藤隆太だ。しかし、幸いキャラ設定がダメダメのヘタレだったので、あまり気にならなかったのので日本語版でも十分楽しめる。
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