八方ふさがりなアニメ業界
以前から賛同者にバナーの貼り付けなど依頼して、目につくようになっていた。
趣意などを見ると内容に同情することもあれば、違和感があるところもあるのだけれども、窮状を訴えていることはよく分かる。ただ・・・だけれどもだ、おそらく改善されないだろう、この状態は。申し訳ないけれども、今頃になって、尻に火がついて燃え落ちそうな頃に、こういう事をやったって、無理なんじゃないかという気持ちの方が大きい。
事を起こすのが10年以上遅かったと思う。
5年ほど前に経産省が出した資料に制作費5000万円がアニメ制作会社に渡るときに目減りして800万円くらいになるという架空のビジネスモデルなのだが図示した物がある。さらに下請けならもっと悲惨だろう。このルートは一見搾取構造のように見える。だが、枠の中の人も外の人も、この商売の中身を考えたことがある人がどれだけ居るのだろう?
1本5,000万円その中には広告料や電波利用料(キー局+ネット局)と言った元々料金が高い物がセットされていて、それだけで3,000万は平気で使ってしまう。電波利用料は一種の税金だ。目減りしてるのではない。
最初から1000万円弱の予算しか与えられていないのだ。それで作れなきゃ作らなくて良いよというスタンスなのだ。そういう事実をとらえて議論してる人は少ない。
時には特別予算が出ることもあるだろう、しかしそれにはそれなりの理由があるはずだ。
その上アニメ30分番組制作には質にかかわらず、与えられた予算以上の金額がかかる。1,500万円くらいかかるとその資料には書かれていたはずだ。放映後の収入でそれを補っているのが現状だ。もちろん耐えきれない人も多い。
その状態で大卒だろうが何だろうが手取りで数万の世界なのだ。
じゃあ逆に彼らが、例えば、倍貰って、あるいは実制作費が倍増えて、できあがった物は倍良くなるのだろうか?残念ながらそれは違うだろう。
「アニメは日本で唯一売り物になるコンテンツ」と言う人がいるが、それもちょっと違う。売るモノは他にもあるし、「アニメの中に売り物になるコンテンツがある」だけの話で、しかも、売れてるイメージのある「宮崎アニメ」もヨーロッパでは評価が高いがアメリカではさっぱりだし、あと他に売れてるって言うほどの物はやはり数えるほどしかない。そもそも日本でヒットしなかったモノが向こうで商売になるほど売れるケースってほとんど無い。(あのゴライオンですら玩具はちゃんと売れていたはずだ。)
結局いくつかある中にヒットが生まれると言うだけのことで、アニメ=売れる物でないことは、実はそんなことを言っている人たちの方が十分に知っているはずなのだが。今爆発的な本数の新作を作っていて年に何本、万人に受ける物が出せるのか。
そう考えると「売れない物に資本家が金を出しますか?金を回収できる当てのない物に投資をしますか?」と言いたくなる。
以前アニメ制作のためのファンドを作ると息巻いていた人の話を聞かせて貰ったことがある。でも、今この手のファンドはもうじり貧になっている。外れの方が多い博打で、掛け金は出せない。一発逆転ねらってもあるかも知れないが、アニメすべてにおいて掛け金を上げるなんて、普通しなし、出来ないだろうと思うのだ。
ファンから見たい物に金を先に出させるようなファンドもあるが、そもそも回収する金を出す側に、制作費を拠出させることに無理がある。パイが小さすぎ。
しかも、30分アニメでこれだけの資金が必要な物を、今の貧乏アニメ制作会社が自力で集めるのは本当に至難だ。
だから広告代理店やスポンサーの力をかなり早い段階から使ってアニメ業界は延びてきた。制作に旭通信社や創通エージェンシーなんて名前が入っているアニメは古い時代から見てきただろう。現在の政策委員会方式でもその中に彼らは外せない。最終スポンサーを束ねるのにはアニメ業界にはネゴシエイターが居ないからだ。
以前「キテレツ大百科」と言うアニメがやっていた。アニメの実制作はシンエイ動画だったと思うが、あるクーデターがあって突然この番組が終了する。それはテレビ会社から中抜きしている広告代理店を外せばもっと効率が良くなると言われて、番組終了と言うことで終わり、その後広告代理店無しで新しいアニメを始めたのだ。それが「亀有公園前派出所」だ。
だが、結果としてさほどアニメ制作会社の実入りは増えなかった。単純に中抜きされた物すらも折半されたからだろう。フジテレビの勝ちである。
一番のお金の稼ぎどころをアウトソーサーであるところのテレビ局や広告代理店に任せざる得ない状況がある限り、この厳しい構図は崩れまい。
「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版・序」では制作委員会方式ではお金はある程度集められるけど色々と制約が多かったために、自前で資金を調達して制作したと言うことである。極端な話を言うと資金が行き詰まったら続きが見られない可能性だってある。しかし、このビジネスモデルは頑張って成し遂げて欲しいものだ。
アニメはやすくできるからアニメで作るという風潮は今もって続いている。あんな支離滅裂な庵野版「キューティハニー」だってアニメ作るよりはお金が集めやすかったそうだ。
この問題を解決するには本当に山のように課題がある。
今言ったようなことを解決することと、企業としては当たり前なんだけど貰ったお金で本当に物を作れる体制を作るというのも重要だ。そのときにまた別な痛みも生じるだろう。搾取が無くなればいいとか、頑張って良い物を作れば何とかなるなんて思ってる人は、何のビジョンもプランもない人だ。良い物であることは絶対条件、前提条件だ。そんなことでは絶対解決できない。茨の道だ。
さて、このJAniCAは何から手をつけるのだろうか?ファンはどう協力できるのだろうか?業界内でも賛同しない人たちがいる、今の状況で厳しさだけが目立つなぁ。
※チャンとお金の計算をしてから書こうと思ったがシミュレーションしてる時間が惜しくてこのままで開示
2007/11/01追記
波料や広告料が仮に下がっても、それはスポンサーから広告代理店やテレビ局への拠出金が減るだけで、制作費を上げる根拠には全くならないという事に思い当たらない人が多いのは、何でなんだろう?仕事をしてないか、仕事をしていても商売をしていない人か、あるいはものすごいお大尽なんじゃないだろうか(笑)
最後の人はアニメ制作会社に言うように自分がお金を拠出してあげればいい。
普通は宣伝のためのお金なんて掛けたくない。質が変わらず減る分にはそのままお金は懐に戻すだろう。値切ったりやすい出物を探したりする人がほとんどだろうと思う。みんな同じだ。特別なブランド品だけがちょっと異質なだけ。
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