「クローバーフィールド-HAKAISHA-」インプレッション
この話は感想書きにとっては、出遅れたら意味がない。話のネタこそが一番のキモだからだ。そのために、極力情報を入れなかった人もいるだろう。秘密主義の最たる物で、秘密であるからこそ面白く感じる人が多い話だと思う。
だから、これから観る予定の人はこの記事は見ないように。
あと10日ほどでアメリカではDVDの発売が開始される。今年に入って公開された映画なのにだ。最近のアメリカ映画は特別な物以外、どんどん映像メディアになってしまう早期回収型が多い。ネタバレを押さえるには映画好きには辛い時代だろう。
さて、のっけからバラしてしまうが、この「クローバーフィールド-HAKAISHA-」は良くできた怪獣映画だ。アメリカ映画で今、よくこの企画が通ったなと思う。ネタ枯れとは言え、そこそこヒットしたハリウッド版「ゴジラ」でも次は無かった。本家の日本でも怪獣映画は廃れてしまってネタで作られる「ギララ」か「ウルトラマン」くらいな物だ。
で、考えるとこの宣伝プロジェクトから丸ごとが「クローバーフィールド」なのであって、映画はその一部と言う位置づけなのだろう。
内容は怪獣そのものよりもパニック物に近く、そういったのも企画が上手く通った理由かも知れない。
映画も再三、画面酔いを忠告する宣伝を行っていたが、それほど酔う物でもなかった。怪獣映画にカムコーダー映像を持ち込む点だけは新しかったが、人視点の怪獣物というアイデアは新しさはない。
ただ、今回のような見せ方をしなければ、ここまで話題にもならなかったし、ヒットもしなかったに違いない。
カムコーダーを素人が操っているのでチャンと観ることが出来ないわけだけど、隠したいところではとってつけたような素人っぽさで、重要なところ、逃してはならない物はすべて収まったプロ裸足の画面にはちょっと笑ったりもするのだが、展開がめまぐるしく、仕掛けも多いので、飽きはしない。
あのカメラワークにCG等SFXを納め、おそらく作業は大変だったろうと思う。怪獣はいかにもアメリカのクリーチャー然としているが、その正体は最後まで分からないし、その正体や事件の全貌も我々には分からない。
これだけ情報がめまぐるしく行き来する社会だけれども、いったん情報が途絶えてしまうと全く闇の中に置かれているような状況になる。
日本でこういう怪獣映画が出来たら、もう少し延命できたのかも知れないが、日本ではここまで撮影の秘密を押さえられまい。
俯瞰で怪獣を観るシーンなどは日本の怪獣映画では今までうまく行っていないが、ハリウッド版「ゴジラ」でも印象に残るシーンがある。そのハリウッド版ゴジラよりもこの「クローバーフィールド」の怪獣は無敵感が強いので、日本の怪獣っぽいが姿形は全然違うのでその辺は意見が分かれるだろうか?
数年前のスピルバーグの「宇宙大戦争」は宇宙船をゴジラに見立てた演出で、面白かったが、こちらもエンドロールにかかる曲を聴けば分かるとおり、「ゴジラ」を多分に意識している。
個人的にスーパーマン過ぎるのじゃと思われる人たちが出てきているし都合の良い展開でストーリーを進めてもいるが、なかなか面白かった。こういった分からないし、何も解決し無いどころかかわいそうな話なんだけどドラマは進んでいくというのは、日本の怪獣映画ファンにはなじめないだろうか?その辺は知りたいところだなぁ。
この映画はこういった映画だったが、実際は背景の設定まで組んでいたようで、いくつかWebでも仕掛けがある。
一つはこのウェブサイト
タグルアト
URL= http://tagruato.jp
映画では名称が出てこないが、日系企業という設定のタグルアト社のウェブサイトだ。日本語も選択できるようになっているが実際にはない。英語など複数の言語版はあるようだ。
コレが何かというと次の物を観てもらえると分かる。
Webコミック「クローバーフィールド-KISHIN-」
URL= http://www.kadokawa.co.jp/tachiyomi/comic/cloverfield/
話の内容はあまり面白くないし、発想貧困な同人マンガみたいなんだけど、この中に出てくる会社が「タグルアト」だ。つまり怪獣をこの世に呼び覚ました元凶というわけ。今頃何で日本企業にしたのかはよく分からないけど(jpドメインだからね。「手繰る跡」?)
コレがプロローグだと映画が成り立たなくなるので、蛇足だなぁと思ってる。
この映画の第2弾が企画されているという話があるけど、「映画」が面白いわけではなくて、全体の仕掛け込みの面白さなので、柳の下のドジョウはもう居ないと思うけどなぁ。
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