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2008.06.08

「ザ・マジックアワー」インプレッション

 大いに笑って、大いに泣いた。端的な感想として、三谷幸喜の最高傑作じゃないだろうか?と思う。

 もちろん現時点でのだが。

 正直、脚本のアラはある、監督としての稚拙さも感じる、でもそれが監督としての勢い、脚本家の勢いに変わってしまう妙な相乗効果さえ感じた。

 (以後、ネタバレ多いと思うので注意)

 まずコメディとして面白い。

 こんなに笑える佐藤浩市は初めてだ。"笑わせられる"と知っていても笑っちゃう。"デラ富樫"となった"村田"の一挙手一投足から目が離せない。舞台での三谷作品は観たことがないが、きっとこんな感じで惹き付けられていくのだろう。

 正直、脚本、演出ともに古くさいとか思わないではない。ちょっと因果が見えにくいシーンも結構ある。でもおかしいんだから仕方ない(笑)

 冒頭"守加護"にやってきた"村田"の大荷物を見て、なんて大荷物だとハッキリ思わせといて、適当に忘れたところで出てくるトランポリン。ゴムの拳銃。舐め回すボスのペーパーナイフ。映画を観終わったら欲しいことこの上ない。

 そして、そんな現実と"デラ富樫"にハラハラしながら、普段やり過ぎるとくどくって話をブチ壊しかねない、色々なものに対するオマージュやリスペクトを感じさせる"あそびシーン"にグッとくる。

 たとえばアバンタイトルで「マジックアワー」の講釈をたれる三流役者"村田"のバックにある"マジックアワー"を思わせるホリゾント(背景画)は「ウルトラセブン」の最終回を彷彿とさせるなぁと思ったら、本当に「ウルトラシリーズ」も手がけたこともある島倉二千六(ふちむ)の手による物だった。(セブンの最終回をやったかどうかは知らないけどね。)この講釈が説明的台詞なんだけど説明してるシーンだからしかたない(笑)しかも堂々とそんなことを語っちゃう"村田"のキャラ説明に笑っちゃう。そして忘れた頃にそれは効いてくるって巧みさに感心したりする。

 それから古い映画の画面では女優のシーンは何故か少しぼかしが入ってるとかそういった細かいこだわりのような物や、"MinatoHotel"の女主人の戸田恵子の化粧がシーン毎に全く変わってる(タイムキーパーの失敗みたいな物を表現してるんだろうか?)とか、本当はそうでもないんだろうけど後半ドッと出てくる映画の裏方さんの普段は見えない行動とか、村田の敬愛する往年のスター"高瀬"を演じるのは「奥さまは魔女」のダーリンの声を当てていた柳澤愼一だったりとか気づかなくても面白いけど気づけばもっと面白いところとか、たまらない。

 それからクライマックスのクライマックス。指鉄砲のシーンはとても好きだし、偶然写っていた自分のシーンで心変わりする"村田"とか(その場に居合わせるための偶然が上手く作られていてとても良い)。

 でもそういう巧みさだけじゃなぁない。

 この映画は一日に一回だけ訪れるわずかなチャンスの「マジックアワー」を人に誰しも訪れる数少ない輝ける時と重ねている。「数少ないチャンスだから大事にしろ」と最初に振っておいて、「しかし、それは何度でも訪れる、一度失敗したらもう一度挑戦すればいいじゃないか」と村田が高瀬に気づかされるシーンとか本当に気持ちにグッとくる。

 正直、前半のハラハラするシーンはあんまりハラハラ恥ずかしくって、早送りしたくなるんだけど映画だから出来ない(笑)でも最後まで観ちゃうとまたすぐ最初から観たくなる映画って本当に久しぶりだ。

 今まで観たことがない佐藤浩市、深津絵里も面白いが、オールスターキャストでありがちな役者の使い切れ無さ感が無いのも今作の特徴で、作品の性質の所為だと分かっていても、そういうこと含めて三谷作品の最高峰だと思う。

 最後の市川昆あそびも個人的には好きだな。

 これから個人的には稼ぎ時で(笑)時間がないので、2度は見られないと思うけど、少なくとも個人的には今年観た日本映画で一番面白い。大人にならまず万人に勧められる映画だ。

 それから自分で書いといてなんだが、ビデオだと恥ずかしい部分を早送りしちゃって面白さが半減なので(笑)映画でストレス感じながら観た方が後半盛り上がると思うなぁ。

 満足満足。

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