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2008.07.27

「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」インプレッション

 「鬼太郎」って凄いなぁと思った。この「千年呪い歌」が凄いのではなく。「墓場」も「ゲゲゲ」も併せて「鬼太郎」ワールドとも言うべき器の凄さ、懐の深さ、言い換えれば「原作:水木しげる」の凄さというか、改めて感じた。

 今年は「墓場鬼太郎」のアニメ版があった物だから「コレこそ本物」的な人もいたと思う。しかし、墓場はベースになった話ではあるけど、鬼太郎自身は不死身の生命力と地獄との行き帰り能力以外はさして目立った能力のない、ただの怪しい子供だ。(それは重要な要素だが)

 「ゲゲゲ」もアニメと平行して連載された物以外は決してアニメを想起させる物ではないし(たばこ吸ったり、生きるために金稼いだり)そもそもがバリエーションが豊富なので、「コレが本物」と言うこと自体ナンセンスだったりする。

 そして墓場も含む漫画版もアニメ版も、ドライであろうがウエットであろうが、与えられた属性に悩まずにその属性を突き進むのだ。

 だからヒーロー属性の時の鬼太郎は人を助けることに悩まない。愚痴は言っても必ず助ける。反人間的な時には育ての親でさえ「じゃぁ!」の一言で見捨てて逃げる。

 しかし、今作の鬼太郎は悩むのだ。相当短いんだが人を助けること身の上の問題と照らして悩む。これた単体のエピソードは原作にもよりどころがあるがそういう悩み方はしなかった。「千年呪い歌」の悲恋話とともにマイノリティとしての妖怪と人間の間に立って鬼太郎は悩むのだ。

 ところが、見終わればコレもしっかりと「鬼太郎」の話だった。

 恐ろしい話である。

 さて、本編だが、この話、まともに伝承解析などにこだわってしまうと、ツッコミ所が多すぎて楽しめない。(あるいは相当な妖怪玄人でないと楽しめない)ので、妖怪映画らしくユルユルと楽しむことをおすすめする。「千年」である必要性や「カゴメ歌」である必要性はただの印象だけの物だ。話を推し進めるには必要だが、有り体に言ってしまうとどうでも良い。

 個人的には実写版鬼太郎では今までで一番面白いと思った。

 全体的には前作よりもレベルが上がっていて、同じ監督、スタッフ、キャストでこうも変わるのかといった印象だ。妖怪の出オチだけで見せていた前作よりも普通の人が思うような妖怪の印象に沿った話に仕上がっているかな?と思う。(出オチは相変わらずあるんだ。岩魚坊主と布団と枕で寝ようとしていた枕返しっぽい妖怪に妙に反応してしまった(笑))

 さて、一応前作を引きずって始まる冒頭だが、メインキャストで唯一演技に難のあった鬼太郎のウエンツはなんだか、前作とは全く打って変わっての演技で、今作はチャンと主人公になっている。これはやや鬼太郎のダークな演出部分を前面に押し出している所為で、アニメの成功が大きいのかもしれないが(5期はやや人間を突き放したような表現をすることが多い)コレが全体的に雰囲気を作っているので恥ずかしさを緩和してくれるからだろうか?

 今作のMVPというか一番キャラが立っていたのは「蛇骨婆(as 佐野史郎)」だろう。この大芝居は癖になって見終わった後、顔の横に手を持って来て「シャーシャッシャ」とやりたくなること請け合い(笑)婆(演技)対決で砂かけ婆の室井滋が押されるなどダレが想像しただろうか。そうそう。義眼の演出は佐野史郎のアイデアだそうだ。

 この大芝居(と当人は謙遜)はしかし、ぬらりひょん役の緒方拳の演技の押さえた感じとコントラストがあって、引き立てている。今作のぬらりひょんは史上最高に格好良い。今までぬらりひょんはアニメ版の青野武が一番しっくり来ると思っていたが実写版では緒方拳かなと思った。

 だってイデオロギー的論争だけだったら、今作の鬼太郎は絶対にぬらりひょんに勝てなかっただろう。

 演技者でこうまで印象の違うキャラになったのも、それを許容できる世界観というのも本当に凄いのだが。

 それからレギュラーの大泉洋のねずみ男は今作もすばらしい。見た目の汚さもアップしてるし(笑)

 そういう意味で、妖怪のビジュアルも手が入ってなかなか頑張っていた。

 さとりは石燕の絵がモチーフの猿ではなく、ピンクの鹿。糞攻撃が鬼太郎ぽくて好きだ。それから今まで頭の良い妖怪として書かれることが多かったが、バカだが先読みが出来るキャラになって居たのは俳優のキャラの所為だろうか?

 それから、もう一つ今までと大きくビジュアルが違う夜叉(今作のアクション面での強敵)も良い。アジアンテイストで、寡黙。今までバイオリンからギターなどの楽器とセットで水木作品では描かれているが、今回はアジアの古楽器をモチーフにした装束で格好良い。

 やや、深刻なテーマを帯びているためか、寺島しのぶが人間の顔の時でも怖いからか、は分からないが、雰囲気がちょっと対象年齢高めに感じたのが辛いところか。前作より劇場に遙に子供の観客が増えていたのはヒットしているアニメのおかげだろう。

 出来たらもう一作くらいこのメンバーで観てみたいところ。しかし、アニメ版の2年目以内にもう一作は辛いじゃろうて。シャーシャッシャ。

 ん?

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