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2008.11.01

「容疑者Xの献身」小説を見た後の映画のインプレッション

 何というか「やっぱり」な感じなんだが、映画に感じる不満点は小説には全くなかった。

 ただ、映画は良くできていて、意図は間違いなく伝えることが出来ていると思う。テレビシリーズの延長上なら"優"をやっても良いんじゃないかと思う。

 冒頭の通勤風景などから石神の尋常ならざる洞察力と思考速度は読みとれる。主人公が尋常でない天才で有れば、その敵も尋常であってはいけない。この洞察部分と「ゴキブリ殺し」の後のやりとりが無いと、後の思考の説明が出来ないので、必要だと思うんだが映画はスルーした。ここがまず大きな違いだ。

 大筋は同じ。映画の冒頭の大げさな実験、登山による映像的ハッタリは無く、主人公湯川の周辺がテレビ用に改変されていることやらを除けば、まあまあの線だ。冒頭のハッタリは「"愛"について分からない」話を持ち出させるための話で、ラストシーンへの大きな伏線だ。その意味の方が作劇上は重要かも。

 この話は容疑者Xの石神が主人公。

 石神の容姿はやはり小説風に醜男で有った方が分かりやすいし、柔道をやっていたと言うところが、細々とした部分で見た目の説得力を生むので、そういうキャスティングだった方が良いのだが、堤真一の演技はそこをカバーしている。

 そしてやはりこの話は一番の見所は最後のシーン。ここが上手くいっていたので、そこで点が甘くなっているかも知れない。

 最初、タイトルとシチュエーションからありきたりなイメージを持っていた。頭のとてつもなく良い男が女性関係だけはどうしてもうだつが上がらず翻弄されて、はめられてしまうようなイメージだ。

 結果から言うとそれも間違いではないような気もするが、ちと違っていたか。

 石神が自己犠牲的で、そこに美徳を感じる人も多いと思うが、彼は同時に彼女を守り通したという大いなる満足も得ていたはずだ。彼女を守り通すことこそが数学以外に唯一、彼がこの世に存在している理由であるのだから、それを破られてしまうことは本当に苦しいことだったろう。

 湯川がどうしてそれを破ったのか、それは小説では触れていない。触れていないからこそ、ラストの絵面が泣けてくるのだ。

 そして見ている側、読んでいる側はそのようなある種の快楽を得た石神をうらやましく思いながら、それを破られた悲しみにいたく同情したくなる。

 この話を見て読んで思い出した話がある。うろ覚えだが夏目漱石の随想だったか、金銭的に苦労した天才少年が、進学できずに働きながら独学で数学を勉強し「凄い発見をした」と二次方程式の解法を説明に来たという話を読んだ記憶がある。進学していればすぐにでも習うことの出来た方程式の解法だ。解説書もなく自分で発見したのだからたいした物だが、人間は他人の知識の上に新たな積み重ねをすることで勉強を繰り返して、その知恵と知識を蓄えて、先の世界へ進むことが出来るのであって、天才でもその部分がなければそこまでだという話なのだ。

 ところが石神は違う。もっとも今の世界だからと言うのもあるし、石神は大学まで行っていたので、環境も違うのだけれども・・・「愛」だけは分からなかったのだ。

 小説版は映画では巧くピースがはまらないパズルを巧く処理している。映画を見て少し首をかしげた人は是非小説版を読むことを奨める。最後のどんでん返しを後押しする1エピソードがあって、それで綺麗にはまるのだが・・・逆に映画で大満足だった人は読まない方が良いかもなぁ(笑)

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