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2009.11.22

「2012」インプレッション

 平坦なストーリーをシーンの緊迫感とシチュエーションだけで引っ張ってるだけだし、「トンデモ」ネタにツッコミ所もあるのだが、まぁ画面を見逃せないという意味では、本当に良くできている。

 ホント話は平凡だ。

 でもこれ意外に侮れない映画なのだ。

 二人のメイン主人公は結局自らの失態で多大な犠牲を出す。悪でもないが決して良い人なんかではない。ヒロイックだが独善的で対比する悪役っぽいキャラクターが居なければ大抵の人たちは首をかしげるだろう。

 でもこの映画に出てくる人たちはほとんどが諍って諍って生き残ろうとする人たちだ。

 「2012」。超常現象ネタとか好きな人にはコレがなんだかすぐに分かっただろう。最初、謎の予告(笑)が出たときにすぐにディザスター物、パニック物とふんだはずだ。

 で、全容が明らかになるにつれ、ノアの箱船物だと言うことが分かっていく。観た感想を有り体にして言ってしまうと地球規模の「日本沈没」だ。

 話としては間が抜けている(笑)しかしその間が抜けていることさえも見事に考え抜かれた巧妙さを感じた。

 そもそも冒頭に言ったとおり二人の主人公は散々失態を繰り広げる。

 まず、運転手で喰っている超常現象ネタの物書きは、イエローストーン(昔教科書に「エローストーン」と書かれてたのを思い出すなぁ)で地球の異変に気付き、別れた妻と子供たちを救うために奔走するのだが、飛行機で逃げるご主人様一家の言葉からそれを知ったり、しかも先に偶然整備中の飛行機があったり(しかも2回(笑))、どんなにヒドイ惨事にあっても逃げおおせる。

 途中引っ張っていってくれるのに必要な、妻の恋人の外科医(しかも豊胸上手い美容整形外科(笑))とかその患者とか、必要なくなったら見事に水の中だ。

 こんなのはまぁ普通に観てたらあり得ないよとか、突っ込みっぱなしなんだが、画面が醸し出す迫力と勢いと緊迫感がそれを凌駕する。

 一方の博士の方も同様。最初に問題に気づいた何人かなのだが、彼は何度も計算ミスをして、どんどん危機感をあおる。その上で最後の最後にアメリカの船を木っ端微塵に仕掛けない大英断をしちゃうと言う(笑)

 彼を主人公に据えたのはオバマの所為だというのはよく分かるが、最初に秘密を知るシークエンスが欲しかったのだろうし、大統領にしても話の都合上、居残りを選択させたくて大統領では困った。と言うのでああいう役に据えたのだと思う。最後にはチャンと未来を渇望する演説をして盛り上げた。

 とは言っても見に来る雑多な人種や各国の観客に配慮することも忘れない。

 G8を基軸に重要顧客国を絡ませる。特に中国を皮肉りながらも大々的にフィーチャーしているのは面白い。

 謎の建造物建築で「間に合うとは思わなかった。さすがに中国だ」と言う件は、技術力ではなくて金と物と人を動員してあれだけの物を作れるのは中国だけだということだ。

 最初に見つけるのがインドの研究所だと言うことも面白いし、ロシアに敬意を払うのも面白い。

 アメリカ内でも黒人博士が最初に相談しに行くのが白人政治家である。彼はいかにも悪徳政治家なの印象を最初に持たされ確かにそれをベースにしてはいるものの、報告論文を読むと一瞬で大統領にまで報告すべき事と分かるような能力の高い人物とも設定していてこの2面性が上手く使われている。

 これは本来的には人種を越えた共同体のような物を見せるためのものなのだが、同時に沢山の観客を呼び寄せるための商売上の手段になってて巧妙だ。

 だから一見緻密さは無いようだけど、映画を見てもらうと言うことにおいては周到な計算で作られている。

 こういうのがハリウッドの超大作だ。

 全世界規模の話だから様々な人種が出ても可笑しくはないけど、配置の見事さには驚く。BRISCsで見た目で関わってないのはブラジルくらいだろう。この辺は地続きのここまでドラマに参加させると残すと嘘くささや五月蠅さが抜けないという判断だったか、サブプライム後に一番元気が残ってるところがブラジルだという読みがなかったのかは分からないが・・・。とにかくそういうところも含めて面白い映画だったと思う。

 「トンデモ」の部分のツッコミ所はまぁ「と学会」あたりがやってくれそうなんで、そっちの詳しい人たちの話を待つことにして、ネタの仕込みにはお勧めの映画だった。

 この手の映画はなるべく大きいスクリーンで観たいよね。今作のCGは本当にすばらしい。

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コメント

 マヤ人からコメントが付くとは。コメントありがとうございます。

 タイトルの指摘はBRICsですね。失敬。

 「間に合う・・・」の件は、確かに北京オリンピックそのもののネタなんでしょう。それ自身がまさに中国が金も人も物も集められることの象徴な訳で、さらに言うと冒頭の"ダム工事"の人民排除やラマとの対比にシニカルな物を感じます。

 この映画は最初は映像の凄さを楽しんで、2度目は制作者の戦略を検討するのに見ると面白いかもなぁと思ってると事です。

BRISCs?

「間に合うとは思わなかった。さすがに中国だ」のくだりは、
北京オリンピックの件に掛けたジョークだと思いました。

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