「沈まぬ太陽」インプレッション
先週は「ロボゲイシャ」への誘惑を断ち切れず、観るのを見送ったので今週観賞した。
いかにも「大作」と言った面構えで、「沈まぬ太陽」でなければ100点満点で80点は固いところだろう。3時間半にも及ぶ超大作なのだが、全く長さを感じさせない。「10分休憩」の表示が出たときに「もう半分?」と時刻を確認したくらいだ。
「沈まぬ太陽」は文庫本にして5巻に成ってしまう大長編。内容も濃い。原作者の山崎豊子がその物量を1本の映画にまとめろと言ったことや、そもそもが日航批判で政策的に制作が困難が予想された作品だ。実際に日航からは警告文が出ていた。制作委員会はその政策面で苦労したはず。見に行く動機の一つにはテレビではもろにスポンサーなので、地上波には掛からないかも知れないとも思ったことがある。
この辺りは「クライマーズハイ」が映像化できたことが大きいとも思うのだが・・・。
もちろん、実制作スタッフは長さへの挑戦だったはずだ。自分の作品の密度と長さを考えて言って欲しいよな(笑)>山崎先生
その割にはキャラクターのまとめや間引き、エピソードの端折りで上手く見せている。端折りすぎて、バタバタした感じがするところもあったが、大事なところを上手く生かしていると思った。個性的ではないがしっかりやってる感じだ。
映像面では現地映像との質の乖離や、CG合成でそれはないだろうと思うシーンがあったりするのだが、国民航空の飛行機が出る際に、その向こうを当時のNALではないJALらしき飛行機滑走していったり、妙な意地を感じる。
それからラストシーンだ。これなくしてはと言う部分なので、頑張ったのだろう。力が入っている。
一方入っているようで適当に抜けているところもある。
新大阪駅は今の新大阪で撮っているがカメラワークでごまかしたものの2階の「本」はここ10年ほどに改装したときに、あの看板になったはずなので少なくともこういったところは手を入れてないんだとか、思いながら観ていた。
それにしてもロケ地には苦労したようだし(とは言っても現在の羽田はあの頃の羽田とは違うわけだし、航空機も変わっているから日航から拒否されたかどうかは分からないなぁ)、メイクや衣装であんなに若返ってみせるとは(笑)女でなくとも男も凄いと思った。特に三浦友和は見事だよなぁ。若返りも老けっぷりも。
オールスターキャストで出演陣も有名人が出ているが、個人的には「仮面ライダーZX」の村雨良をやった菅田俊や響鬼などに出演している蒲生麻由が出ていて、にっこりした。
内容は確かに日本航空批判、政治批判を織り交ぜてはいるものの、ややソフトだ。そういう意味ではエンターテーメント的に昔気質で、一途な男、ヒーロー恩地元の生き方を良く表している。そこをどう思うかで内容への評価が変わるとは思うが、昭和気質な人には、あの生き方をうらやましく思う人も大勢いるだろう。
ただ、コレは原作の時点でもそうなのだがモデルの人物と恩地はかけ離れている。美化された小説のために用意されたヒーローで有ることも知っているので、その辺は複雑な思いもあるのだが。
とにかく大作にして社会派のスタイルを崩さず、作り上げたことは敬服に値し、何よりも3時間半になろうかという大作を飽きもせず見せてくれた制作スタッフと役者陣に感謝の念を抱く。
現時点で日航再建はまたしても政治の重要テーマとなった。この時点での公開。今年の日本映画の中でまず最初に観てもらいたい映画だと思った。
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