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　対立構図の緊迫感がよく分からない第一試合以外は非常に楽しめて、当たりの興行だった。

　メインとセミが素晴らしいと本当に興行が締まる。

　メインの諏訪魔対船木も意外な緊迫感で面白かった。船木がMMAではなくUWF風味の戦い方になっていたのは少し面白かった。

　プロレスが下手だと思う二人だったので危惧していたが、後半じわじわと諏訪魔の底力が現れて、良かった。ラストライドもだが、最近使っていなかった垂直落下式バックドロップやラリアットと言うより腕パンチの衝撃はかなり離れていたが見応えのある物だった。

　まあ最後のマイクがDDTのHARASHIMA風だなぁと思ったが、良いレスラーになってきたなと感じた。

　この興行で一番注目だったのはカズ対武藤だ。ものすごく無謀なと思わせる挑戦も話題作りに十分だったからだが、仮に減量に成功して、武藤とタイトルマッチになったときにどう転ばせると面白いのかが自分には見えていなかったから、確かめたかったのだ。

　ガウンを脱いだ武藤は確かに痩せて、腹回りが二回りは小さくなって、上半身の筋肉が凄すぎるものだからデフォルメキャラのようだった。足はさすがに細くなったが、その分、膝の負担も少ないんじゃないかなと思った。

　リーチや背丈だけでなくパワーでも圧倒的な武藤にカズがどう対処するのか、その結末はますます分からないと思った。

　武藤はいつもの武藤で動きも軽やかだが老獪、技の緩急、間の取り方どれも見事だ。これを身につけることはおいそれとは出来ない。目新しい技っても無い。でも見せてしまうんだから素晴らしい。

　いつものようにグランドで展開したら、足責め、隙を見てシャイニングといった展開に持って行く。しかし、その中でカズが見せた見事な返し技が、本当に素晴らしかった。

　ビデオでスロー再生を何度もしたくなる様な見事な返し技。しかし一回では決まらないでここぞと言うときに２回転で決めて、武藤を下した。

　武藤は余裕があるが、返せなかった。

　この展開を他の選手が出来るのかといったらノーだろう。この二人だからなしえた、本当に見事な試合だった。

　不思議な話だが馬場の頃から自分が見た全日の興行は外したことがない。カードが弱くても結果楽しんでいる。

　何とも不思議な感じを抱きながら土砂降りの中、会場を後にした。