「トゥルー・グリット」インプレッション
コーエン兄弟の新作だ。
ジョン・ウェインの「勇気ある追跡」のリメイクとされているが見た印象はかなり違うだろう。ジョン・ウェインは何処までもヒロイックで格好良い。しかし、今作はそんな話ではないからだ。
アカデミー賞にはそんなに思い入れがないが、「ノーカントリー」では3人のノーカントリーを描き、アメリカの抱える問題を描き出した二人が、またも荒野で描き出したのは・・・今にも通じるエゴとそして愛の話なのだ。
主人公だけでなくこの荒野に現れる人たちは本当にエゴの塊だ。「人が良い」といった人が出てこない。一癖二癖は持っている。
真の原作である小説はおそらくそういった部分を強く持っているのだろう。主人公の一人マティ・ロスが大人と駆け引きする様はそうしなければ生きていけない世界だというのがよく分かる。
この気丈な少女は目鼻立ちのはっきりした蒼井優を思わせるが、しゃべり方から何から非常にはまる子役だった。ヘイリー・スタインフェルドは覚えておこう。
主人公は「トロン:レガシー」も記憶に新しいジェフ・ブリッジス。良い味の親父だ。
それにマット・デイモンがテキサスのレインジャーラビーフを演じる。
この事件の結末は最初に自らが話してしまうためそこにどうなるのかといった楽しみがあるわけでもない。
しかもそこには痛快なヒーローは居ない。それぞれが苦しみ、悩み、しかし生きている。そのドラマだ。
美しく枯れた荒野。見事な美術と映像設計。そして子役も含めてほんとうに素晴らしい演技。見ているとたまらない。いろんなことがグッとくる。
ドラマというのはこういうことなのだと思うのだ。心のあやが折り重なっていく。
終盤の攻防はとても高度な心理的な物を感じさせちょっと見には何故そうしたのか分からないほど。ジョン・ウェイン版へオマージュを捧げながらもリアリティが増している。
トゥルー・グリッドとは「真の勇気」
最後にエゴの間に垣間見える愛と厳しい現実の中のかすかな希望は「ノーカントリー」にはなかった救いだ。
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西部劇、というだけでこの作品に何かのレッテルを張っているっぽく感じてしまうほど。
というのは 例えば、この映画に登場する「風景」
脳裏に焼き付いた景色やシーンがたくさん。
それが再現されることを目的に、また劇場に行ってしまうかもな自分がいる。
あるいは、...... [続きを読む]
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