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2012.02.18

「鬼に訊け 西岡常一の遺言」インプレッション

 ものすごく多い人だった。すでに一線からリタイアしている年配の人が多かった。

 おそらく彼らと自分とでは受け取り方が違うだろう。そして、近くにいた若いカップルともである。

 西岡は故人であるので映像はすでにあったドキュメンタリー素材から持ってこられていた。

 西岡については、課題図書だったのか、父親からもらった「法隆寺を支えた木」(NHKブックス)で読んで、知った。ただの建設屋の話かと思ったら、そうではなく、材料である木の吟味から始め、成すべき事をなすためには道具も作る良い意味での職人である。

 今作の「鬼」とは、そんな職人的な真理に拘る西岡の異名なのだが、本人はいたって温厚な口で、あるときには狡く、造り上げたいものを造りあげるために人と交渉してきた凄腕のネゴシエーターでもあるのだ。

 薬師寺に移ってからのお話はあまり見ていなかったのだが、今回の話でさらに好きな人になった。

 西岡の映像を全く、あるいはあまり見ていなかったクリエイティブな仕事をする人たちは何か感じてくれるのではと思う映画だった。

 冒頭に見る年代や立場で印象がことなうようなことを言ったが、自分がもう少し歳を行っていれば年寄りを大切にしろだとか、年寄りの言うことは聞けといったようなことに、すげ替えて伝えてしまうような気がしたからだ。

 あるいは若い人には退屈な成功譚にしか見えないかもしれない。

 しかしコレは監督が意図しているかどうかも怪しいのだが、自分が動き回れる間は自分の能力と知識を最大限に活かして、活躍し、衰えてからは指導力で後進の指導や情報を残していく作業を行い、そして最後には己の実入りを減らしてでも成すべきことを納めたいと覚悟を持っていた、そんな男の一生の話である。

 どんなに知識があっても裏付けがなければ伝わらない。知恵に変えることが出来なければ意味がない。

 それでは「あなた」は何を成すのか?と問われているように思った。

 だからコレは、今まさに中年になって最後の踏ん張りを見せる者たちや若者向けの物語で、何も成してこなかった人たちには用のない悔恨を生むだけの映画のように思った。

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