「おおかみこどもの雨と雪」インプレッション
記号的な反応なのかも知れないが、タイトルが出た直後から、「名作」と思わす何かが漂っていた。
「サマーウォーズ」比較して、全般陰気に感じてしまうかも知れない。
けど、このちょっと暗めの流れは細田守作品らしいものだ。
話はおおかみ男とそのこどもの設定以外はシングルマザーの子育て物語そのもので、目新しい感じはしない。しかしながら、細かなシチュエーションが積み重ねられて、説得されていく自分の有様が面白いのだ。
特殊な部分は普通の話に置き換えられる。そして多分その設定でも十分に伝わる話を書けるのだけど、こういう設定にした意味はあるのだろう。
単純に言うとこんな主人公のような人はそうそうお目にかかれない。自分はこれからも会うことがない、とても希有な人だと思う。我のない、荒俣宏を称した京極夏彦の「心ない」に近いかも知れない。いい人なのである。
こんな幸せな空間はリアルだが実はものすごく虚構の塊だ。それを説得する為に丁寧に積み重ねていくところが監督の真骨頂だろう。
今回も映像のしりとり、過剰な横スクロールと同ポジが使われている。けど同ポジションの表現に厳密には同ポジでない3D可変型同ポジという感じのものがあった。新しい家での時間変化を表したシーンに顕著なのだが、あれは見ている側の目線の変化やそこからの気持ちの変化を表しているのだろう。
観ている間に、本来は知っている花の側にいるはずなのに、知らないうちに村の住人側に自分たちを置いて、応援せずには居られないように仕向けられて、またもしてやられた。
突拍子もない設定。しかし、同時にありふれた物語の基軸。しかし、こうも見事にのせられると「また負けた」と思ったのだ。
今作の音楽は宣伝のものと全く違っていたので、是非劇場で確認して欲しい。
P.S.今回背景にもCGが多用されていた。山並みをなめていくシーン、待ちの通行人などは、いかにもCGで残念だった。しかし、多くの部分はCGで3D化したことのメリットを享受していて、上手いなぁと思った。
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