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2012.11.27

「羅生門 デジタル完全版」インプレッション

 実は「羅生門」自体は、ちゃんと見たことがなかった。というのは地方ではなかなか再映が掛からないし、黒沢物は映像ソフト化も遅れていて、端折ったソフトとかは見ていたけれど画質も悪いし、ちゃんとは、チャンスがなかったのだ。

 そしてこの「羅生門 デジタル完全版」は数年前に完成した際に公開されたのだが、そのときは見に行けなかった。

 「羅生門」は自分の好きな話の構成である「羅生門方式」の発端であるにもかかわらずなのにだ。だから今回、「映画は大映」企画で放映が決まった際に、どうしても見たかった。

 間でいろんな解説を見聞きしているから耳年増になってしまった。しかし、百聞は一見にしかずだ。

 まず見事な撮影だとのっけからうなる冒頭の降雨シーン。あの羅生門に降り注ぐ雨を、今だったらCGでごまかしてしまうところだが、どうやって撮ったのかと舌を巻く。そういう驚きを、鮮明な映像で見られること自体、幸せなことだと思いながら見ていた。

 物語の不思議さがモノクロで撮影されていることで意味深長な気配を強調しそれを感じながら、語りに入り込む。至福だ。

 ただ、音はどうにも出来なかったのだろう。当時の録音技術ではいかんともしがたい物があるし、音楽は趣はあるけれど、劇判で動作に効果音を付ける演出などはやはり古くさく感じてしまった。

 ただ、コアの多視点の物語のおもしろさは、さすがに「羅生門方式」という名前を残しただけのことはある。

 そして後世の人が、さらに拡張し、映画技術をつぎ込んで面白い物を作っている点がとてもうれしかった。原点を確認し、映画の底力を体感できる作品だった。

 他にも興味深いラインナップがある。大画面で見る数少ないチャンスなので気になったら是非。

映画は大映70周年サイト
http://www.daiei70th.jp/

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