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2013.10.09

「ムード・インディゴ うたかたの日々」インプレション

 元々は小説原作のSFというかファンタジーなのだそうだ。ただ、原作や先行した映像作品を知らず、今作の宣伝の不思議なビジュアルだけに惹かれて観ると結末に結構なショックを受けると思う。

 自分はエンドロールに入る瞬間にゾワっと鳥肌が立った。
 文字面だけで書くなら、一人なら仕事もせず、何不自由ない生活のできた男が友達や恋人(後の伴侶)との付き合いの中で、じわじわとトラブルや不幸に会い、最終的に状況を改善できなくて、友人はその恋人に殺され、伴侶は謎の病気に蝕まれ、高名な医者にも見捨てられ、死んでしまう。

 しかも、最後には慣れぬ仕事に就いても稼ぐに至らず、男は財産を使い果たし、結局どうしようもなく、この先も見えない状況で話は終わる。

 救いようのない悲劇だ。

 ただ、それは多分驚かそうという意図ではなくて、終わることのない都市計画工事への揶揄とか、サルトルをモデルとした思想家への憎悪のようなもの、金儲けに走る教会経営者への憤りとから感じるに、作者か、映画スタッフ自体が思う得体の知れぬ恐怖を描いていたのではないか。
 というのは最近、流行の貧乏者との単純な対比で金持ちの凋落を描く映画ではないからだ。
 演出では不思議な空間のビジュアル演出もだが、全体を通して画面の色、極彩色の前半から、画面のトーンが変わり、最終的にはモノトーンになっていくこういう計算が行き届いていて、良かった。

 それと先行して映像化作品が、原作をどう解釈して映像化したのかに興味が出た。

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