「悪の法則」インプレッション
この映画は解りにくい映画で、そこをどう捕らえるかで印象も全然違う。そういう意味では絶賛も出来ないし、むちゃくちゃ言うこともない。ただ、達者な豪華キャストの割には地味な作りの映画に見えると思うので、その辺が多分、アメリカで不人気だった原因じゃないだろうか?
この話、割と前半で今回の事件の黒幕は示されてしまうので、犯人捜しという意味でミステリーには成らない。しかし、その意図というか、自分も含めて「どうして?」の部分が多分多くの人は理解できないので、ホラーというかスリラーというかそういう映画になっている。黒幕は頭も良いし策略に長けたサイコパスな人物だったというのはちゃんと示されているのに。
同じ人が脚本に絡んでるコーエン兄弟の「ノーカントリー」と同じ恐怖を湛えている映画だ。
自分で頭が良いと思っていても、実際は自分の理の中でしか生きていない。それは誰でも同じで、違う理の中のもの達とは深入りする前に断っておかねばならないのだということをまたも伝えてくれる。
一つはメキシコの麻薬カルテル、一つは黒幕、そして主人公の周りの人たち。忠告れたむごい仕打ちの話をあまり真に受けず主人公は聞いていたがそれが実際の物となったときにはもう遅すぎるのだ。そして主人公がどんなに自分の理を持ち出しても、それは全く通用しない。
米南部で実際にそういう状況にさらされている人たちが居るのだろう。具体的な話だけでなく、普段の自分たちにもそれはいえるのだろう。時は取り戻せない。
さて、ミステリーに成らないと言ったが、大きな謎は一つだけ残っている。それはいつどこで黒幕が強奪の対象の話を知ったのかと言うことだ。しかしそれも全て映画の中に情報は埋め込まれている。
確かに、この映画はパッと見、難解だ。黒幕の行動は解っても、動機が良く分からなかったり、説明的台詞を言ってるにも関わらず比喩的だったり主語が良く分からない表現になっていたりで、最後まで腑に落ちてくれないので後味というか気持ちが悪いままなのだ。
コレはもちろん制作者からスペイン語を邦訳しないように指示が入っているように、そうすることで不安が大きくなる演出も兼ねている。
でも、大きな謎のことを念頭に見てみると、難解でなく元のテーマ通りの理の不可解さから来る恐怖が重要だったんだなと思った。そういう意味では「悪の法則」というタイトルは的を射ているのじゃないだろうか?と思う。
P.S. この映画でのセレブ達は老獪でも結局つけ込まれてしまう。一般人ならなおのことだろう。
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